犯罪だったのか

Peter Singer*1 “Rationality required in debate of incest taboo” Shanghai Daily 21 October 2014 (http://www.project-syndicate.org/commentary/should-adult-sibling-incest-be-a-crime-by-peter-singer-2014-10)


9月に「独逸倫理委員会(German Ethical Council)」は「成人のきょうだい間の性交(sexual intercourse between adult siblings)」を非犯罪化するよう勧告した。数年前に実の妹と性交したとしてライプツィッヒの男に有罪判決が下され*2、2012年に「欧州人権裁判所(European Court of Human Rights)」はこの判決を支持している。
きょうだい間の性交が道徳上の罪であるだけでなく刑法上の罪だったということは知らなかった。 独逸倫理委員会によれば、この「関係の犯罪化(criminalization of their relationship)」によって困難に陥ってしまうのは、特に”half-brothers and sisters who came to know each other only as adults”のカップルである。(例えば)幼い頃に両親が離婚してそれぞれ母方と父方で別々に育てられ、大人になってから、実のきょうだいであるとは知らずに出会ってしまった男女。「成人のきょうだい間の性交」は「自己決定力のある人々の間の自発的性的関係」なのに何故禁止されてきたのか。ひとつは遺伝学的根拠。しかし、このライプツィッヒの男は2004年にパイプカットをしており、子どもができる可能性はなかった。また「遺伝子の異常性の回避」を掲げると、性交禁止の範囲は止めどもなく拡大されてしまう危険がある。究極的には「異常な子孫」ができるリスクが低いと判断されたカップルのみが国家から「生殖」の許可を得るということになってしまう。そんなことでいいのか。
ところで、Jan Hartmanというポーランドの哲学者*3が「独逸倫理委員会」の勧告についてのコメントを公表したところ、所属するJagiellonian大学*4当局は彼の発言は「大学教師というプロフェッションの尊厳を毀損して」おり、「紀律委員会(disciplinary commission)」にかけると述べている。
See also


“Blog about incest causes outrage” http://www.newpolandexpress.pl/polish_news_story-6860-blog_about_incest_causes_outrage.php


インセスト」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090319/1237434321 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091120/1258688054 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101118/1290096150 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20111111/1321040014も。