プレッシャー、殺人に至る?

少し前の『産経』の記事;


ゼミ生、大産大准教授を刃物で切る 殺人未遂容疑などで逮捕「先生の授業に圧力を感じた」
2014.2.16 22:17 [殺人・殺人未遂]


 大阪産業大大阪府大東市)で15日にデザイン工学部の男性准教授(39)が研究室で刃物を持った男に襲われ、右手を切られる事件があり、大阪府警四條畷署は16日、殺人未遂と銃刀法違反の両容疑で、同大工学部3年の桐谷直斗容疑者(21)=同府東大阪市若江東町=を逮捕した。

 同署によると、桐谷容疑者は准教授のゼミに所属。調べに対し、「先生の授業に圧力を感じた。先生がいなくなれば圧力を感じなくなると思った」と容疑を認めているという。

 逮捕容疑は15日午後6時40分ごろ、同大15号館9階にある准教授の研究室で、持っていた文化包丁を准教授に突きつけ、殺害しようとしたとしている。准教授は包丁を取り上げるなどして抵抗し、右手に全治2カ月の重傷を負った。

 大学は休講日だったが、桐谷容疑者は准教授が出勤していると思い、自宅から包丁を持ち出して研究室に向かったという。同署は16日、関係機関から桐谷容疑者の犯行をうかがわせる情報提供を受け、桐谷容疑者を任意同行。容疑を認めたため、同日夕に逮捕した。

 同大によると、桐谷容疑者は真面目で勤勉だったという。瀬島順一郎学長は「残念なことが起こってしまい、大変申し訳ない。原因を追求し、このようなことが起こらないように全力を尽くす」とするコメントを出した。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140216/crm14021622180003-n1.htm

(少なくとも『産経』においては)この事件の続報はないようだ。
この事件を知ったとき、2009年に中央大学理工学部構内で教授が卒業生に刺殺された事件を思い出す方も多いのではないか*1
「先生の授業に圧力を感じた」ということだけど、「圧力」って何? 所謂〈オリンピックの魔物〉のようなものか。それにしても、殺人に至る「圧力」ってどんな「圧力」なんだろうか。そこで思い出したのは三島由紀夫の『金閣寺』。以前にも書いたのだが、「金閣」は「主人公の欲望を喚起するとともにその欲望を禁止し・萎えさせる」ものであり、「その罠に嵌ってしまった主人公が罠を無効にするために採った行動が放火だった」*2。桐谷直斗が女と性交しようとすると、挿入直前にこの「准教授」の幻影が現れて、瞬時に萎えてしまうということがあったのだろうか。
金閣寺 (新潮文庫)

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さて、「原因を追求し、このようなことが起こらないように全力を尽くす」という学長のお言葉だが、「全力を尽くす」といっても、社会関係(人間関係)においてこのようなストーカー的トラブルを根絶するというのは不可能だろう。ただ、前兆となるような出来事はなかったのかとか、「殺人未遂」への最終的なトリガーとなった出来事は何だったのかということは解明可能であり、そこから教訓を汲み取ることもできるだろう。
ところで、高林陽一監督の映画『金閣寺』が2013年にDVD化されている。
金閣寺 [DVD]

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