加藤茂明問題(メモ)

片瀬久美子さん*1が採り上げていたのとは別の事例であるようだ*2
TV朝日の報道;


東大元教授らが論文ねつ造 画像合成など51本(12/26 20:27)


 分子生物学の権威として知られる東京大学の元教授らが論文をねつ造していた問題で、不正のあった論文が51本に上ることが東大の調査で分かりました。

 東大の調査委員会の中間報告では、分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授(54)の研究グループで2011年までの16年間に発表された51本の論文で、架空の実験の画像が合成されるなどの不正があったということです。加藤元教授はホルモンの仕組みの研究などをしていて、論文のねつ造が発覚し、去年3月に退職しました。不正な論文51本のうち13本はすでに撤回したということです。問題の論文には加藤元教授ら合わせて200人の研究者が関わっていて、調査委員会は今後、全員から事情を聴き、来年中にも最終報告書をまとめるとしています。加藤元教授は、これまでに国から約30億円の研究費の助成を受けていて、東大は返還することも検討しています。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000018651.html

読売の記事;

実験前に結果示した図作製…東大・論文不正問題

読売新聞 12月26日(木)21時58分配信


 東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授(54)(2012年3月辞職)の研究室で論文に不正が疑われている問題で、東大は26日、51本の論文で不適切な画像210か所が見つかり、うち43本は撤回すべきだとする調査委員会の中間報告を公表した。

 調査委によると、研究室で1996年以降に発表したがんなどの基礎研究の論文が165本あった。このうち43本の論文では、別の実験の画像を使ったり、切り貼りした画像を使ったりするなど、単純なミスとは考えられない加工が多く見つかったという。8本の論文で見つかった画像12か所の誤りは単純ミスとした。

 改ざんに当たるかどうかの最終的な認定は見送った。ただ加藤元教授の研究室では、実験の前に、実験結果を示した図をあらかじめ作るなどしていたという。委員の一人は「極めて特殊な習慣」と指摘し、関係者の規範意識の薄さなどが問題の背景にあるとみている。

最終更新:12月27日(金)7時33分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131226-00001177-yom-soci

毎日の記事;

<日本分子生物学会>加藤元教授論文不正で東大調査委を批判

毎日新聞 12月27日(金)20時51分配信


 東京大の加藤茂明元教授のグループによる論文不正問題で、日本分子生物学会は27日、論文43本の不正を認めた東大の26日の中間報告について、「十分な説明責任を果たしていない」と批判する見解をホームページで公開した。東大は不正の告発受理から中間報告まで約2年かかったが、この間、学会は大学に情報開示を求める要望を繰り返してきた。

 見解では「今回の内容は具体的な問題点の言及もなく、研究成果についての学術的な検証や評価もない」と指摘。科学的な評価を盛り込んだ最終報告の早期公表を求めている。【八田浩輔】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131227-00000086-mai-sctch

TV朝日の報道は、「分子生物学の権威として知られる東京大学の元教授らが論文をねつ造していた問題」という言い方をしていて、これだと加藤茂明元教授が〈主犯〉であるかのような印象を受ける。しかし、上昌広氏によると*3、そうではないという。曰く、

驚いたのは、不正の構図が複雑であることだ。加藤元教授の指示のもと、研究室をあげてデータを捏造した、という単純な話ではない。多くの場合、論文の筆頭著者と、不正を働いた研究者は別人だった。不正の大部分は、当時、助手を務めた一部の研究者によって行われていた。

今回の調査を受け、関係者は処分を免れない。加藤元教授は2012年3月をもって東大を辞職しているし、東大は不正に使った研究費を返却するという。やがて、責任問題追求の矛先は、実際に不正を行った研究者達や、彼らのかつての部下にも向かうだろう。一部の助手は、不正を指摘された研究が評価され、他大学の教授に就任している。辞職は避けられないだろう。

一方、不正研究で学位をとった大学院生の処遇は難しい。今後の調査結果を待たねばならないが、彼らは不正を知らなかった可能性が高いからだ。彼らをどう処遇するか、医学界をあげて議論しなければならないだろう。

また、上氏は加藤氏が説明責任を果たそうとしていることを評価している;

(前略)特記すべきは、加藤元教授が東大の調査に全面協力するとともに、社会に対して、自分の言葉で説明したことだ。かつての部下達に「すべての研究資料やノートを提出し、調査に協力するよう」に伝えたことは、バルサルタン事件で逃げ惑う医師や製薬企業関係者とは対照的だ。また、加藤元教授は、取材を希望するメディアすべてに対し、丁寧に対応した。知人の記者は「自分の責任をきっちりと認めています。さらに、正直に問題を説明してくれます。こんな人は初めてです」という。このようなやりとりを通じ、ゆっくりではあるが着実に、問題の本質が社会に伝わりつつある。

医学研究の信頼が揺らいでいる。信頼を回復するには、嘘をつかず、正直に社会に説明することが欠かせない。加藤元教授の取り組みに注目したい。

加藤氏の弁明については、「加藤茂明 元東大教授、研究不正の背景を語る」*4も参照のこと。この事件それ自体については、『東京大学 分子細胞生物学研究所 加藤茂明グループの論文捏造、研究不正』というblogあり*5