「生殖性」(メモ)

教育学入門 (子どもと教育)

教育学入門 (子どもと教育)

寺崎弘昭「教育と学校の歴史」(in 藤田英典、田中孝彦、寺崎弘昭『教育学入門』岩波書店、1997、pp.85-176)から。
エリク・エリクソン*1はその『幼児期と社会』において、「第七の発達段階として「成年期(adulthood)」を設定し、それを「生殖性vs停滞」といった葛藤の相のもとに捉えてい」る(p.148)。しかし、


(前略)そのさい、「生殖性(generativity)」と彼によって言われているものは、たんに子づくり(generation)ということではなくて、したがって、「成年期」=子づくりの時期ということではなくて、もっと精神的なものが当然ながら含意されているものでした。エリクソンは言います。「生殖性(generativity)とは、本来、次の世代を確立させ導くことへの関心です。」これは〈教育(education)〉=産育への関心と言い換えてもよいでしょう。「成年期」なるものは他者である「次の世代」への関心によって支えられている、という認識を示しているのです。その意味で、「成年期」と聞いてわたしたちが完成され自立した大人をイメージするとすれば、それは誤りであると言わねばなりません。むしろ、「成熟した人間は、必要とされることを必要とします」。「成年期」なるものは、他者である次の世代=子どもを必要とし、それとの関係あるいは関係行為によってようやくにして支えられているのです。(後略)(pp.148-149)