竹内実先生も

竹内実先生*1が7月の末に逝去されていたことを知ったのは、『毎日新聞』に掲載された、河田悌一氏の「先生の京都大と東京大大学院での師である倉石武四郎博士が七十八歳、京大での師、吉川幸次郎博士が七十六歳で逝去されているから、十年以上、長命であった」というフレーズが印象的な「竹内実さんをしのぶ 才・学・識・史徳を兼備」という文章*2を読んだときだった。
京都新聞』の記事に曰く、


竹内実氏死去 京大名誉教授


 豊かな文学的感性と鋭い歴史認識を駆使した中国近現代史研究の第一人者で京都大名誉教授の竹内実(たけうち・みのる)氏が7月30日、京都市内の病院で死去した。90歳。中国山東省出身。葬儀は近親者のみで行う。(8面に関連記事)

 幼少期を中国で過ごした後、19歳で東京に移り、二松学舎専門学校で漢文学を学んだ。京大文学部から東京大大学院に進み、東京都立大助教授として研究生活を送ったが、学園紛争の混乱を機に辞職。1973(昭和48)年に京大人文科学研究所助教授となり、教授を経て86年から1年間、所長を務めた。退官後は立命館大教授や北京市の日本学研究センター教授を歴任した。専門は現代中国論、中国文学。

 毛沢東の重要著作を集めた「毛沢東選集」の内容に疑問を持ち、初出時の雑誌やパンフレットなどの原文や選集に未収録の文章を丹念に調査。その成果をもとに70〜80年代に編さんした「毛沢東集」全20巻は、以後の毛沢東研究に不可欠の書として国際的に高い評価を得た。文化大革命を批判的に考察した論文「毛沢東に訴う」(68年)も話題になった。

 魯迅(ろじん)の研究でも知られ、著書「周樹人の役人生活−五四と魯迅・その一側面」では文学と歴史の接点を独自に解析し、中国近代史研究の新境地を切りひらいた。2001〜06年には日本人として初めて中国で個人全集「竹内実文集」10巻を刊行した。「毛沢東 その詩と人生」(共著)、「中国 歴史の旅」など著書多数。本紙夕刊「現代のことば」を79〜88年に執筆した。

【 2013年08月01日 15時30分 】
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20130801000091

河田氏の文章から少し引用;

一九八〇年末に、中国の文人の心境を知るため一緒に茶の湯を学ぼうといわれ、三千家の一つ武者小路千家の当時の若宗匠、現在は十四世、千宗守(不徹斎)宗匠に入門した竹内先生は、風流を解する茶人でもあった。

杭州の西湖(せいこ)の船上で、ともに抹茶を楽しんだ先生に聞きのこしたことが多々ある。が、先生はもうおられない。合掌。

これまで幾点か竹内先生の著書は言及してきたのだが、それ以外の著書としては、中国思想の概説書である『中国の思想 伝統と現代』、中国よりも日本に焦点を当てた『紀行日本のなかの中国』をマークしておきたい。(回数として)いちばんよく読んだのは、1990年代はじめに中公新書から出ていた『愛のうた 中華愛誦詩選』、『閑適のうた 中華愛誦詩選 陶淵明から魯迅まで』、『志のうた 中華愛誦詩選 伯夷・叔斉から毛沢東まで』という三部作か。詩経から毛沢東、北島まで。その後、これを超える中国詞華集は出ていないのではないか。
中国の思想―伝統と現代 (NHKブックス)

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愛のうた―中華愛誦詩選 (中公新書)

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閑適のうた―中華愛誦詩選 陶淵明から魯迅まで (中公新書)

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志のうた―中華愛誦詩選 伯夷・叔斉から毛沢東まで (中公新書)

志のうた―中華愛誦詩選 伯夷・叔斉から毛沢東まで (中公新書)