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大倉宏「差別の消去――『ぐりとぐら』 の白」(in 『ぼくらのなまえはぐりとぐら』、pp.108-111)
曰く、
さらに大倉氏は、
少し難しい言い方をすれば『ぐりとぐら』の世界は、戦後民主主義のもっともラディカルな絵本的表現でした。戦後民主主義は伝統的なものすべてを封建的なものの温床として切り捨てようとしました。「封建的」とは「差別(主従関係を含む)を前提とした」ということです。だから絶対平等の理想空間を絵本の中に作り上げようとした作者たちは、それを実現するため、和(伝統)に属するものを思いきって、一切消す決断をした。そういうことだったのではないでしょうか。ぐりとぐらシリーズの色の美しさは、なにより背景の独特の「白」の美しさにあります。白は空白、消去の色です。このやわらかくみずみずしい、どこか凛とした白は、消すことに絵本の生命をかけた作者たちの、意志と決意の重さと深さを語っているように見えます。(p.110)
とも語っている。
シリーズ第一作の誕生と時期を同じくして始まった高度成長は、戦後民主主義の経済的変奏でした。貧しさを克服することで平等な社会に近づける。そんな夢が、驚異的な「成長」を生み出す一つのばねになったんですね。絵本で二匹が森でみつける大きな卵は、その夢の象徴と見ることもできそうです。ロングセラーの時期が高度成長期にすっぽり重なってきたのは、偶然ではないという気がします。(ibid.)
でも、『ぐりとぐら』の根本的な特徴は「リベラル」ということではないか。鷲田清一氏が語った、本義におけるliberal(「解説」in 堀江敏幸『河岸忘日抄』、pp.405-406)*1。何しろ、青山南氏がいうように*2、『ぐりとぐら』は「働かざるもの、食うべからず」という社会主義的/新自由主義的な狭量さとは無縁なのである。
- 作者: 堀江敏幸
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