誰が蒲やねん

「ウナギ、値上がり今年も?」http://www.huffingtonpost.jp/2013/05/31/eel_raising_the_price_n_3364322.html
ニホンウナギ 絶滅危惧種指定の危機 IUCNが本格的検討へ 」http://www.huffingtonpost.jp/2013/07/05/eel_n_3552555.html


5月31日付けの記事に曰く、


水産庁*1は30日、輸入と国内漁獲で確保された養殖用ウナギの稚魚(シラスウナギ)は、値段が高騰した昨年より25%減り、約12トンにとどまったと発表した。近年、シラスウナギの漁獲は低迷しており、ウナギの価格の値上がりは続きそうだ。

朝日新聞デジタルによると*2、養殖業者が仕入れる稚魚1キロあたりの価格は、今年は260万〜270万円。2004年と比べると約10倍に跳ね上がっている。昨年は215万円だった。

「日本の伝統的な食」の一つ、ウナギを守れ――。ウナギの安定供給を図る水産庁は、あの手この手で対策を講じる*3

また7月6日付けの記事に曰く、

ニホンウナギ絶滅危惧種に指定されるかどうかの瀬戸際に立たされている。国際自然保護連合(IUCN)は、減少が著しいニホンウナギなどを、国際的な絶滅危惧種としてレッドリストに載せるかどうかを検討する専門家会合を1日から5日までロンドン市内で開催した。共同通信が伝えた。

IUCNでは世界各国に19の種と亜種がいるウナギの仲間すべてに検討し、評価の原案をまとめたが、「評価が確定するまで公表しない」として、議論の内容を含め明らかにしなかった。

NHKによると、ニホンウナギが協議の対象になるのは今回が初めて。今後、ニホンウナギがIUCNのレッドリストに「絶滅危惧種」として掲載されても法的な拘束力はないが、絶滅のおそれがある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約で規制の対象にするかどうか決めるための重要な参考資料になる。

国内に出回るウナギの大半はこの種類で、親ウナギや、養殖に使う稚魚の多くをニホンウナギの輸入で賄っており、さらなる品薄や価格の高騰が避けられなくなると朝日新聞は伝えている。

NHKによると、全国のウナギの輸入業者でつくる日本鰻輸入組合の調べで、国内に輸入されるウナギの量は平成13年には13万トンを超えていたが、年々、減少傾向が続き、去年は1万9千トン余りまで落ち込んだ。

レッドリストに載せるかどうかの結論は、数カ月後になる見通し。

さて、5月の記事戻ると、

一方、外食産業ではウナギがアツイ。
牛丼チェーン「吉野家*4は、6月1日から、「鰻丼」の並盛りを680円で販売する。昨年100円値上げしたが、今年はさらに30円値上げする。
ライバルの「すき家*5は一足早い5月28日から「うな丼」を発売。並盛りは昨年と同じ780円だ。
回転ずしチェーンの「くら寿司*6も31日から「うな丼」(598円)をメニューに加えるなど、外食産業でのウナギ人気がうかがえる。

こうした需要の拡大による乱獲も、ウナギ漁獲量減少の背景にあるとの指摘もある。

と述べられている。
一方における資源枯渇の懸念と稚魚(シラス)価格の高騰、他方におけるファスト・フード産業による「うな丼」の大衆化。
牛丼屋の「うな丼」については、日本的な鰻文化が幾つかの側面で切り縮められ、その上で再度独自の展開を強制されているな、という印象を持つ。鰻が蒲焼きに還元されているのだ。鰻は捨てるところのない魚で、骨煎餅にしても黒焼きにしてもかしらにしても、蒲焼きと同様に(ときには蒲焼き以上に)美味しくいただけるのだが、牛丼屋にとっては蒲焼き(うな丼)以外の食べ方はないような感じではないか。またこれは鰻において何が消費されるのかということの変容にも対応しているのではないか。出前というのは別にして、そもそも店で鰻を食うとき、私たちはたんに鰻の肉とか米飯とかを消費しているのではなく、何よりも〈時間〉を消費している筈なのだ。つまり座敷席で黒焼きとかをつまみにまったりと酒をすすり、酔いが軽く回ったかなという頃に鰻重(鰻丼)で締めるという食べ方から、カウンター席で牛丼とか同様に掻き込むという食い方への変容。さらに、牛丼とうな丼のカップリングというような独自の展開。

鰻資源の危機に関しては、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070824/1187962334でも言及している。