無そして無

スポニチ』の記事;


作家、精神科医なだいなださん*1死去…雑誌でがん告白


 「パパのおくりもの」や「老人党宣言」などユーモアと風刺に富んだ著作で知られる作家で精神科医のなだいなだ(本名堀内秀=ほりうち・しげる)さんが6日死去していたことが9日、分かった。83歳。東京都出身。自宅は神奈川県鎌倉市

 1953年に慶応大医学部を卒業。医師として病院に勤める傍ら、幅広い文筆活動を展開した。ペンネームは、スペイン語で「何もなくて、何もない」を意味する。

 同人誌「文芸首都」に参加。「海」や「トンネル」などで計6回、芥川賞候補となったが受賞は逃す。65年のエッセー「パパのおくりもの」で注目された。独自の平和論を展開した「権威と権力」、医師としてアルコール依存症の問題を扱った「アルコール中毒―社会的人間としての病気」など、多くの著書を残した。

 2003年、インターネット上の仮想政党「老人党」を結成。「老人はばかにされている。政治へ怒りを率直にぶつけ、選挙を面白くしよう」と呼び掛け、話題を集めた。党結成の精神を著作「老人党宣言」に記した。

 エッセー「娘の学校」で婦人公論読者賞、評論「お医者さん」で毎日出版文化賞明治学院大教授を務めた。他の作品に「人間、この非人間的なもの」など。

 雑誌「中央公論」6月号に「人生の終楽章だからこそ“逃げずに”生きたい」と題する文章を掲載し、すい臓がんであることを告白していた。自身のブログは6日未明まで更新を続けた。

[ 2013年6月10日 06:00 ]
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/06/10/kiji/K20130610005982510.html

時事通信の記事;

なだいなださん死去=精神科医、エッセーや批評執筆―83歳
時事通信2013年6月9日(日)15:51



 作家で精神科医のなだいなだ(本名堀内秀=ほりうち・しげる)さんが6日、死去した。83歳だった。東京都出身。自宅は神奈川県鎌倉市。葬儀は未定。

 慶応大医学部卒。フランス留学を経て、精神科医として勤務する傍ら執筆活動に従事。鋭い社会批評や「パパのおくりもの」などのユーモラスな語り口のエッセー、「海」をはじめ計6回芥川賞候補入りした小説などで知られた。自らの戦中体験を踏まえ、社会、平和問題への発言や活動にも積極的に取り組み、2003年には、医療分野で高齢者の負担増を進める政治に抗議し、ネット上の仮想政党「老人党」を立ち上げ、話題を呼んだ。「鎌倉・九条の会」の呼び掛け人にもなった。

 精神科医としてはアルコール依存症治療の先駆者で、「心の底をのぞいたら」など人間心理に関わる著作も多い。ラジオの「全国こども電話相談室」相談員も務めた。

 「娘の学校」で婦人公論読者賞、「お医者さん」で毎日出版文化賞。この他、「権威と権力」「片目の哲学」「人間、この非人間的なもの」など多数の著書、翻訳書がある。ペンネームは「何もないと何もない(無と無)」を意味するスペイン語からだという。

 近年、がんで闘病中であることをブログなどで明らかにしていた。 
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/nation/jiji-130609X104.html

権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)

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人間、この非人間的なもの (ちくま文庫)

人間、この非人間的なもの (ちくま文庫)

人名というのは苗字+名前という構成で成り立っているということを自明視している。「なだいなだ」というのは意味上からすれば、「なだ」・「い」・「なだ」ということになるのだろうけど、昔から「なだ」が苗字で「いなだ」が名前だと根拠もな思っていた。なだ・いなだ。
それはともかくとして、「なだいなだ」という名前を知ったのは北杜夫*2の文章を通してだと記憶している(どの本かは忘れてしまったが)。北杜夫は「なだ」さんにとっては麻布中学の先輩で慶應病院の同僚だった筈(麻布の同期には例えば小沢昭一*3がいる)。小説は殆ど読んでいないのだが、読んだことがある著書を挙げてみると、『くるいきちがい考』、『民族という名の宗教』、『アルコール問答』、『神、この人間的なもの』、それから編著ではあるけど『〈こころ〉の定点観測』といった感じだろうか。精神医学や文学における重要性というのはいう迄もないのだろう。ここで一言述べておきたいのは、政治思想家、それも非マルクス主義的(アナーキスト的)左翼としての重要性である。これについては、『権威と権力』もそうだけれど、短めの文章としては、竹中労『断影 大杉栄』(ちくま文庫*4への「解説」を読まれたし。
くるいきちがい考 (ちくま文庫)

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民族という名の宗教―人をまとめる原理・排除する原理 (岩波新書)

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アルコール問答 (岩波新書)

アルコール問答 (岩波新書)

神、この人間的なもの―宗教をめぐる精神科医の対話 (岩波新書)

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“こころ”の定点観測 (岩波新書)

“こころ”の定点観測 (岩波新書)

断影 大杉栄 (ちくま文庫)

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