人肉捜索在日本(意外と古風?)

『毎日』の記事;


新聞投書:投稿者に嫌がらせ電話 ネット検索で割り出す?
毎日新聞2013年6月8日(土)00:31
 ◇日弁連「早急に対応を」

 新聞の投書欄に載った投稿者の電話番号や住所がインターネット上に無断で掲載され、嫌がらせ電話を受けるケースが出ている。電話番号検索サイトなどで割り出したとみられる。こうした無断転載にプライバシー侵害を認める司法判断もあるが、法的規制は難しくサイト管理者に削除を依頼するしかないのが現状だ。被害者は取材に不安な気持ちを明かし、専門家からは「言論の自由が妨げられかねない事態」との懸念の声が上がっている。

 昨春、朝日新聞の投書欄に、従軍慰安婦問題についての投書が掲載された中部地方の男性は取材に、掲載後間もなくして自宅に無言電話がひっきりなしにかかってきたと話す。「売国奴」とののしられたこともあったという。調べると、掲載翌日、ネット掲示板に投書内容と住所、電話番号が記載され、電話番号検索サイトへ誘導する書き込みがあった。

 「おまえの居所は分かっている」。5月中旬、政治関連の意見を載せた関東地方の男性宅には、男の声で脅迫まがいの電話があった。同じように、ネット掲示板に電話番号などが書き込まれ、昼夜を問わず無言や嫌がらせ電話がきた。「ネットに電話番号が出ているとは」と不安がる。

 投稿者はNTTの電話帳に登録したことがあったといい、住所・電話番号は、ネット上に公開された検索サイトやNTT電話番号案内で割り出し、書き込まれたとみられる。

 電話帳に公開された個人情報のネット無断転載を巡っては、神戸地裁が1999年6月、勤務先電話番号などを書き込まれ、嫌がらせを受けた医師へのプライバシー侵害を認め、掲載者に約20万円の賠償を命じた判決(控訴棄却後に確定)がある。

 国民生活センターによると、同様の被害相談は昨春から寄せられ始めた。総務省消費者行政課は「表現の自由を考慮すると、法的規制は難しい」として、サイト管理者に削除を依頼するしかないと説明。これに対し、日本弁護士連合会は「被害は深刻。早急な対応が必要」として、発信者情報の開示要件を緩和するよう総務省に求めている。

 朝日新聞広報部は「許し難い行為。確認できれば状況に応じて投稿者に連絡し、削除要請できることを説明する場合もあるが、現在対応を検討中だ」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/20130608k0000m040110000c.html

中国語でいうところの「人肉捜索」だね*1。それにしても「NTT電話番号案内」とは古風だなと思った。実は昔利用したことがあるのだが、便利なことは便利だったけれど、お客様の電話番号を素性も明らかでない第三者に教えちゃっていいの? と今にして思う。形式的には、(不特定多数への公開である)電話帳への掲載を承諾してしまった以上仕方ないということになるのか。
1980年代頃までは、奥付とかに著者の住所がフルで連絡先として記載されている本もあったと思う。また歴史学系の学術雑誌でも著者の(勤務先ではなく)自宅住所が記載されているものがあった。これも、論文を読んで、著者に質問をしたいときなどは、その住所に宛てて著者に手紙を書けばいいので、便利といえば便利だったのだろう*2。勿論著者の住所の公開は、プライヴァシーの侵害とか住所の商業的その他の利用のためでなく、学術的交流の拡大を目的としたものだった、と一応は言えるだろう。
さて上の記事では、「表現の自由」と「言論の自由」の対立が説かれている。これは、一方では個人のプライヴァシーを保護しつつ公共的な言論活動を活性化させてゆくという大きな問題の一部をなしているといえるだろう。具体的にどうすればいいのかはちょっと今思いつかない。またここで問題になっているのは〈非対称性〉だともいえるだろう。つまり、他人の個人情報をネット上に晒している奴らは〈匿名性の闇〉に潜み、その闇に守られている。この〈非対称性〉は均される必要がある。

*1:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110118/1295280095

*2:90年代になると、Eメイル・アドレスに変わる。21世紀に入ると、非常にセンシティヴな情報になってしまう。