「のだめ」にタイゾー

「のだめ」*1内閣については、「ポスト菅直人海江田万里ということなのかしら」とフライング気味に呟いて以来*2、殆ど全く言及していなかったのだった。
取り敢えずメモ。
野田佳彦になるまでの全般的な経緯については、上脇博之という憲法学者の方の「民主党代表選と党役員人事と野田首相指名」というエントリー*3。それから、古寺多見さんのblogから、小沢一郎一派の蠢動とも絡めた意見を少しメモしておく。


小沢一郎4連敗」(不信任案否決劇を含む)なんて言われてるけど、今回小沢一郎に本気で「勝つ」つもりがあったかどうかははなはだ疑問。本気で勝つつもりなら海江田万里なんか担がないだろ。

何度も書くけれども、小沢一郎にとって一番大事なのは「金庫の鍵を握ること」だ。小沢がいつも幹事長の座を要求するのはそのためなんだけど、権力争いをする人たちの金とポストへの妄執を理解しない人たちは、たとえ「小沢信者」でなくとも、軽々しく「経験のある小沢さんを幹事長につけて党内融和を」などと言う。私は、会社勤めの経験から、権力闘争を展開する人たちの性質をよく知っているから、小沢一郎に金庫の鍵を預けたらどんなことになるかは容易に想像がつく。「政治と金」は、どうでも良い問題なんかじゃないんですよ。権力争いの死命を制するものなんですよ。

そんなこと想像もつかない善良な人たちが小沢一郎に騙されるのかと思うと、やるせない思いになる。

代表選の話に戻ると、海江田万里を立てた時点で、野田佳彦前原誠司の主流派内の争いは野田に軍配が上がる、そう小沢一郎は見切っていたのではないか。前原なら、不意打ちの解散をやられて金庫の鍵を握り損ねる可能性があるけど、野田には解散をやる度胸はないから、来年秋にはまた代表選がめぐってくる。私には小沢一郎がそういう読みをしたとしか解釈できない。だって海江田ですよ。誰が「海江田総理」にリアリティがあると思いますか。私は、「海江田が本当に総理になれば面白いのに」とひそかに思ってたけど、さすがにそうはならなかった。これは小沢一郎八百長負けですよ。誰が総理大臣をやったって、この難局で批判を浴びないはずはない。そんな汚れ役は野田佳彦に押し付けて、野田が来年低支持率に音を上げたところで民主党代表選に立ち、それに勝って金庫の鍵を握った上で、同時期に行なわれる自民党総裁選に絡めて政界再編を起こす。これ以外のシナリオを小沢一郎が考えているとは、私には想像がつかない。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20110829/1314621567


(前略)幹事長が輿石東ってことは、小沢派も主流派入りしたうえ、小沢一郎に「金庫の鍵」を渡したってことだよ。政調会長前原誠司で、国対委員長はあの無能な平野博文。要するに民主党の「挙党一致」体制だ。その「挙党一致」の民主党・野田政権が今後何をやるか。小沢一郎も、代表選でグループをあげて野ダメを支援したといわれる菅直人も、国対委員長に腹心の無能な平野博文を送り込んだ鳩山由紀夫も、みんな連帯責任を負うんだよ。こういう体制になった以上、「正統民主党」対「悪徳民主党」の対決などという、誰かさんが描く絵空事には何の意味もないんだよ。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20110831/1314720923

(前略)民主党議員の中でも昔からの小沢一郎の仲間は大部分が強硬な軍事タカ派だ。一川もその一人であって、小沢一郎と同様の「集団的自衛権の政府解釈変更」論者、つまり「解釈改憲論者」である。奥田敬和の系統の自民党出身議員であり、森喜朗のライバル。とはいえ政治思想的にはシンキロー同様のタカ派。典型的な保守政治家なのである。民主党の「党内野党」となっている小沢派から、その中でも特に軍事タカ派色の強い一川を持ってきて、野田佳彦の望む軍事タカ派的な政策を一川にやらせようという魂胆だろう。

経産省鉢呂吉雄にしてもそう。鉢呂は旧社会党横路グループ所属だが、小沢一郎よりむしろ菅直人に近く、昨年の菅直人小沢一郎の代表選でも菅直人支持に回った。その鉢呂を「脱原発」路線をとれば必ず経産閣僚と対立する経産相に任命し、表向き「脱原発依存」を掲げながら、その実鉢呂に原発を再稼働させて「脱原発」派の勢いを殺ごうとしている。「リベラルの会」の平岡秀夫江田五月の後任に持ってきたのも同じで、死刑問題だとか小沢一郎裁判関連だとかの厄介な問題を押しつけた。小沢一郎の「茶坊主山岡賢次国家公安委員長拉致問題担当相に任命したのも同じ。要するに、小沢派や菅派や旧社会党の弱みを巧みに突いているのだ。本当は野田自身がやりたいことではあるのだけれども議論が紛糾しそうなマター(軍事タカ派政策や原発再稼働など)をわざと政敵にやらせる。これが野田佳彦流の人事なのだろう。

これで幹事長を輿石東に任命さえしていなければ「完璧」な策士の人事だったに違いないと思うが、いかんせん「輿石東幹事長」は全てを台無しにする愚策だった。今、野田佳彦は「してやったり」と思っているに違いないが、半年後には幹事長人事の失敗を後悔することになるだろう。

あんまり悪口ばかりでもなんだから、一点だけ「野田新内閣の評価できる点」を挙げておこうか。それは、与謝野馨を入閣させなかったことである。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20110903/1314979938

さて、『読売』の記事;

柴野元衆院議員、首つり自殺か…詐欺罪で起訴

 5日午前9時50分頃、東京都港区浜松町のバイオ燃料会社「日本中油」の本社事務所で、同社社長で元衆院議員の柴野多伊三被告(60)(詐欺罪などで起訴)が首をつっているのを社員が発見、110番した。

 柴野被告は病院に搬送されたが、死亡が確認された。警視庁愛宕署は首つり自殺を図ったとみて、調べている。
(2011年9月5日12時01分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110905-OYT1T00466.htm

Wikipediaによると、本名は「柴野実」*4。俺は平仮名表記の「柴野たいぞう」という筆名の印象が強い。死者に鞭打つわけではないけど、Wikipediaを見ると、怪しさ満点というか波乱万丈な人生だったという感じがする。1990年代から現在に至るまで、政局好きのメディアや政治家たちは〈政界再編〉という鍵言葉(サウンド・バイト)をうざいほど繰り返してきた。彼は〈政界再編〉のダーク・サイドを体現しつつ生き、そして自ら首を縊って舞台を去った。脇役の小悪党が舞台から消えたくらいでは、〈政界再編〉という笑劇の幕が下りることはないのだろうけど。そういえば、彼は新自由クラブの結党にも参加していたというから、元祖〈政界再編〉と呼ばれる資格もあるわけだ。