時代劇(メモ)

水戸黄門』終了*1、それから「反韓流」騒動*2に絡んだ話;


文化通信 編集局ブログ“BunLOG” 2011年09月04日(高崎正樹)  反韓流…杉田成道監督の鋭い指摘
ドラマ「北の国から」シリーズで知られる杉田成道日本映画衛星放送社長が、9月1日に行われたスカパー!時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇「鬼平外伝 熊五郎の顔」発表会見http://www.bunkatsushin.com/varieties/article.aspx?id=1271で話した内容がとても興味深いものでしたのでここに記します。
「韓国や中国は時代劇ドラマを国の文化として捉え、その製作を国家が助成しています。そして、それが日本にどんどん入ってきています。なぜ自国の時代劇がなくなり、韓国や中国の時代劇が増えるのか? そういう視聴者側の(意見)問題が起きてくるでしょう。単純に国家が助成すれば良いという話ではないが、この状況を国にはしっかり認識してもらいたい」。
水戸黄門」(TBS系)が年内で終了することで民放から時代劇レギュラーがなくなることに対し、その危機的状況を嘆いたものです。反韓流、反華流にまで踏み込んだ発言、しかし現在ネット上でうずまくそれとは一線を画した鋭い指摘でした。
脈々と受け継がれてきた時代劇職人の技術、京都の各撮影所にいるスタッフたちの仕事が失われつつあります。杉田社長は言います。「なによりも人がいなくなると制作は不可能になる。なんとか技術を次の次代に伝承していかなければ」。杉田社長自身も昨年公開の映画「最後の忠臣蔵」を松竹京都撮影所で撮りました。
日本の時代劇は製作本数こそ減っていますが、ファンの数が少なくなったのかというとそうではなりません。時代劇専門チャンネルの視聴可能世帯は今年6月末には800万7000世帯に達しています。特に昨年から今年にかけて、一気に100万世帯も増えました。800万世帯突破は数あるCSチャンネルで7番目、国内ドラマ系に限るとファミリー劇場に続き2番目というスピード達成です。
果たして時代劇はどうなってしまうのか。一部のファンがCSで楽しむだけで良いものなのか。反韓流を掲げてデモに参加する人々は、そこまで考えが及んでいるでしょうか。
http://blog.livedoor.jp/bunkatsushin/archives/51293856.htmlhttp://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20110905/p2から孫引き)
韓国や中国が「時代劇ドラマを国の文化として捉え、その製作を国家が助成して」いるというのは知らなかった。韓国はわからないけど中国の「時代劇」が多いのであれば、それは(馮小剛によれば)〈検閲制度〉のせいだよ。現代劇だとお上や党との軋轢も増えるので、関係者は「時代劇」に逃げる*3
ところで、「時代劇に関しては、週刊文春黒鉄ヒロシが同じようなこと(自国の時代劇が…)をいってたけど、テレビの時代劇はスターウォーズと大差ないコスプレ劇なんだから、歌舞伎観に行ったほうがいいよ。NHKなら放送してるし」という意見あり*4。それはそうだね。筒井康隆も時代小説や歴史小説SF小説の一種だと言っていた(『乱調文学大辞典』)*5。ところで、最も「時代劇」的なSF作家のひとりであるといえるアーシュラ・K・ル・グイン*6の作品がどれほど映画化されているのかは知らない。「時代劇」の制作「技術を次の次代に伝承していかなければ」ならないということなら、ハリウッドに買ってもらうというのも一案だろうが、ハリウッド製の時代劇は根本的なところで嫌いなのだった。『ザ・ラスト・サムライ』の日本での反応は大方肯定的だったようだけれど、あれを些かの違和感もなく娯しめるということ自体が「時代劇」を娯しむ資質の衰退なのだということは言っておきたい。ストーリーとか役者の演技以前に、だだっ広い室内とか、あの空間感覚が駄目。
乱調文学大辞典 (講談社文庫 つ 1-3)

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赤毛物の時代劇ということで、リドリー・スコットの『トリスタンとイゾルデ*7を観た。張藝謀に撮らせればもっと派手な演出をするよねとも思ったのだが、第一の感想は編集が散漫だということ。字幕も問題あり。異教時代のブリタニアを「イギリス」と表記するな。近現代の英国と混同してしまうではないか。それから、登場する古代ブリタニア人やアイルランド人が(現代の)そこらのヘヴィメタ野郎どものまんまじゃんと思い、笑ってしまった。映画としての取り得はコーンウォールの荒涼たる風景くらいか。ということで、『トリスタンとイゾルデ』は映像で観るのではなく本で読むのが吉。
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トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)

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