芝居の新しさ

中国春画論序説 (講談社学術文庫)

中国春画論序説 (講談社学術文庫)

中野美代子先生の『中国春画論序説』*1に収められた「非在の肉体」の中で、印度の春画に言及し、男女「いずれもパッチリと目を見ひらき、あたかも無言劇をしているかのよう」だと述べられている(p.164)*2。また、『カーマ・スートラ』において、「抱擁の様式」や「接吻の種類」は「ほとんど芝居の台本であるかのように、演劇的に詳述されている」という(p.167)。その背景として、印度では『カーマ・スートラ』が成立した西暦300年頃には本格的な演劇理論書である『パーラティーヤ・ナーティヤ・シャーストラ』が成立していることを挙げている(p.166)。これに対して、中国で本格的な演劇が確立するのは元代を待たなければならない(ibid.)。
勿論希臘に紀元前から演劇が存在しているのは周知のことだが、少なくとも東亜細亜に限定すれば、演劇というのはそう古いものではないということに気づく。日本の場合、演劇が本格的に確立したのは能楽が確立した室町時代だということになる。朝鮮半島はどうなのだろうか。例えば朝鮮の仮面劇(マダン)が成立したのは中国や日本に先立っていたのか、同時期なのか、それとも遅れていたのか。

*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110120/1295539260 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110711/1310356905

*2:同時に、中野先生は「インド人の男女とも、たとえ全裸になっても、過剰なまでのアクセサリーを外さない」ことにも注目している(ibid.)。