Uzawa/Chicago

関良基*1「米国はなぜ「悪魔」が支配する国になってしまったのか?」http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/c94842ca11c6914d4a2ace3bd9ff3ce1


何故か、かなり長いこと、ブラウザの片隅で開きっぱなしになっている。
経済学者の宇沢弘文*2シカゴ大学を辞めた経緯に関してというか、ミルトン・フリードマン*3一派との確執について、ちょっとメモ;


宇沢先生がシカゴ大学を辞したのは、以下のような理由によります。当時、アメリカの徴兵局は、学生運動をしていたり、成績が悪かったりする学生から順番に徴兵するという方針でした。学生たちは「成績表を徴兵局に送るな」という要求をし学部棟を占拠します。
 宇沢先生たちは、「教授全員が学生の成績をつけない(=つまり徴兵局に送るべき成績表そのものが存在しなくなる)」という提案をし、教授会で通すことに成功したのです。のちに市場原理主義帝国主義的拡張の牙城として知られるようになるシカゴ大学経済学部なのですが(私のブログだとこの記事参照*4 )、その当時はまだそのようなリベラルな雰囲気があったのです。
 
 そのときもちろん、ベトナム戦争を熱烈に支持し、後にシカゴ学派の指導者になるミルトン・フリードマン一派は宇沢先生たちの提案に反対しました。
 フリードマンの子分の一人にハロルド・デムセッツという経済学者がいるのですが、宇沢先生が、学生達とのあいだで「成績をつけない」という調停案をまとめて壇から降りてきたときに、「Are you a commie?(おまえは共産主義者か?)」と聞いたそうです。そのとき、宇沢先生は頭がカーッとなっていたので、つい売り言葉に買い言葉で、「そうだ。何が悪いんだ」と答えてしまったそうなのです。
 早速デムセッツは、よろこびいさんでFBIに「うちの大学にアカ教授がいます」と通報したようで、その直後からFBIが宇沢先生の身辺を嗅ぎまわるようになりました。
 ついに「アメリカにはもういられない」と判断し、帰国を決意されたのでした。宇沢先生は、フリードマン一派に体よく追い払われたといえるでしょう。

 フリードマンは、日本に帰国した宇沢先生の動向にまで探りをいれ、パシリの日本人研究者に、宇沢先生が日本語で書いたフリードマン批判の記事などいちいち英語に翻訳させて報告させていたのだそうです・・・・。フリードマンのネチネチした粘着質的な性格をよく物語るエピソードといえるでしょう。

 宇沢先生が日本に帰ってから、アメリカの大衆紙の『ボストン・グローブ』紙には、「宇沢は日本における共産主義運動のリーダーだ」という捏造記事まで書かれたそうです。何で日本の社会党にも共産党にも、他の新左翼党派にも一度も所属したことのない宇沢先生が「日本の共産主義運動のリーダー」になれるのか、全くもって不思議なはなしです。

 業績的には文句のつけようのない宇沢先生が何度もノーベル経済学賞の候補にりながら、これまで受賞できないでいるのは、フリードマン一派の裏工作によるものではないかというのが、心ある経済学者のあいだでのもっぱらのウワサです。「アカ(commie)」というレッテルを貼られた時点で、アメリカでの社会的評価は絶望的になってしまいますから。

最後の「ウワサ」の真偽については勿論知らず。「パシリの日本人研究者」って誰? 立教大学にいたSとか?
さて、宇沢先生の経済学における業績や道徳的な高潔さは勿論否定することができないけれど、なされるべき批判はなされるべきだと思う。『日本の教育を考える』の中で展開されている寄宿学校マンセーの議論とか。或いは、文化大革命礼賛であるとか*5
日本の教育を考える (岩波新書)

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