春はなし

『毎日』の記事;


八百長問題:春場所中止 相撲協会が決定

 大相撲の八百長問題で、日本相撲協会は6日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、大相撲春場所(3月13日初日、大阪府立体育会館)の開催中止を決めた。本場所の中止は旧両国国技館の修理が間に合わなかった1946年夏場所以来、65年ぶり2度目。不祥事による中止は初めて。

 協会は、八百長問題の解明が進まない中で、本場所を開くことは国民の理解を得られないと判断し、開催を断念したと見られる。
http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20110206k0000e050039000c.html

八百長問題」については、


Justin McCurry “Sumo wrestling hit by match-fixing scandalhttp://www.guardian.co.uk/world/2011/feb/02/japan-sumo-wrestling-match-fixing
HIROKO TABUCHI “In Text Messages, Signs of a Rigged Sumo Fight” http://www.nytimes.com/2011/02/05/world/asia/05sumo.html


で知る。昨年の野球賭博問題*1の余波か。
NYTの記事で引用されている石原慎太郎*2のコメントはお茶目でいいね;


Some sumo fans, however, said match-fixing was all part of the game.

“It’s been going on from the old days,” Shintaro Ishihara, Tokyo’s 78-year-old governor, told reporters Friday. “We should just let them trick us into enjoying it,” he said, adding, “It’s just like Kabuki theater.”

と石原を褒めてしまったところで、幾つか無駄口。
古寺多見氏が1980年代に『週刊ポスト』がやった四季の花手記を中心とする「大相撲八百長キャンペーン」について書いている*3。そこで思ったのだが、四季の花というのは「八百長」の仲介人をやっていたということだったのだ。しかし、今回発覚した「八百長」では、力士同士がケータイのメイルを使って打ち合わせをしている。IT革命恐るべし! 一般経済と同様に、「八百長」でも仲介業者を排したC2CというかB2Bの直接取引が成立している! 但し、今回メイルから足がついてしまったということは、IT革命の落とし穴?
ところで、NYTの記事にもSteven D. Levitt とStephen J. DubnerのFreakonomicsの話が引かれている。経済思想さんに教えていただいた『毎日』の「余録」に曰く、

余録:八百長メール発覚

 米国で6年前にベストセラーになったシカゴ大学の経済学者、S・レビット教授らの本には相撲の八百長の分析がある。3万以上の取組データから7勝7敗と8勝6敗の力士の千秋楽の対戦を調べたのだ(邦訳「ヤバい経済学」東洋経済新報社)▲過去の対戦結果から7勝7敗の力士が勝つ確率を計算すると48.7%で5割を下回る。だが実際の勝率は79.6%と8割近かった。むろん勝ち越しをかけて懸命だったからとも解釈できる。ただ面白いのはその2人が次の場所で勝ち越しのかからぬ対戦をした場合だ▲前回、7勝7敗だった力士は40%しか勝っていない。さらにその次の対戦は約50%と、確率的な“正常値”に近づいている。気鋭の若手経済学者ならずとも、星の貸し借りがあったと推測ができる。同著は過去の八百長の告発事例もこの確率論で検証してみせていた▲「星を借りてるよね」「ダメなら20万は返して」「立ち合いは強く当たって流れでお願いします」。こんな力士のメールが発覚しては、これまで相撲協会がくり返してきた八百長の否定はいったい何だったのかとしらける。無気力相撲どころか気力充実の熱演である▲携帯電話での八百長をうかがわせるメールにかかわっていたのは幕内力士をふくむ13人という。いよいよ存亡の土俵際に追い込まれた相撲協会は真相の徹底的究明を約束したが、泣きたい気分なのは相撲ファンの方である▲レビット教授らは、過去に八百長疑惑が浮上した際の次の場所では力士の勝率の異常が急に解消したことも皮肉交じりに書いている。異国の学者に舞台裏を見透かされた「国技」が情けない。
http://mainichi.jp/select/opinion/yoroku/news/20110203k0000m070102000c.html

「情けない」のは(『毎日』を含む)日本のブンヤだろうとはいいたいけれど、それはともかくとして、実は1980年代に、電卓を持って図書館に数日間籠もって過去20年間の新聞縮刷版を捲りに捲って、千秋楽における7勝7敗力士の勝率を計算した人はいるのだ。その人は経済学者でも統計学者でもなかったので(映画研究者)、論文は書いていないけれど。その話はアテネ・フランセ文化センターのトークの際に披露されたのだが、確率論的に怪しいということは、俺を含む一部の映画ファンは20年以上前から知ってはいた。ただ、その話によると、勝率は9割近くになるということだった。統計に頼らなくても、前頭の下位から十両に定住する力士というのも少なからずいたしね。重要なのは「星の貸し借り」をするためには演技力が必要だということ。あまりにもあからさまだったら〈無気力相撲〉による注意処分というのもあったわけだし。ということで、ガチンコしかできない演技力のない力士も当然ながらいたわけだ。また、角力の基本的な技能を身に着けていない幕下未満の力士には「星の貸し借り」は無理だという話だった。

*1:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100705/1278260670 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100706/1278428975

*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060410/1144636844 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060430/1146374995 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060831/1157027021 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060918/1158548179 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061106/1162827266 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061111/1163243740 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061118/1163845906 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070225/1172421318 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070306/1173200489 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070415/1176606885 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070418/1176869274 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080114/1200293046 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080305/1204725934 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080614/1213420843 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080726/1217051072 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090208/1234026998 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090706/1246825752 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091002/1254502738 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091129/1259488849 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100305/1267767495 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100419/1271645099 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100420/1271729350 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100423/1272044223 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100426/1272309085 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100606/1275759613 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100619/1276975557 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100620/1277038368 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100903/1283488570 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100925/1285387758 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101019/1287455134 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101205/1291518836 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101208/1291778596 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101210/1292006456 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101215/1292353461 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110120/1295532154

*3:http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20110203/1296689868