http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2010/09/93-2b27.htmlに、観光化に揺れる富山市八尾町の「おわら風の盆」に関する『朝日』の記事が引用されている;
まあ「観光立国政策の過ち」という程のものではなく、問題となっているのは観光客の民度であり、より根本的には内々の祭事が見世物化することのディレンマだろう。勿論、柳田國男の『日本の祭』を持ち出すまでもなく、日本の祭りは中世以来都市化の進展とともに緩やかに見世物化してきた。京都の祇園祭、大阪の天神祭、高山祭り、川越祭りなどはそもそもが〈見せる祭り〉だったわけだ。京都の左大文字祭は内々の祭事という側面と見世物という側面の微妙なバランスを維持しているけど、「風の盆」が近くから見るものであるのに対して、大文字は遠くから見るものだという違いがあった。それから、観光資源としての価値は、(仮令それが怪しげなものであっても)「伝統」に依存というか、さらに言えば寄生しているということは付け加えなければならない。
伝統と観光、揺れる「おわら風の盆」 富山・八尾2010年9月3日19時56分
哀愁漂う胡弓(こきゅう)の音色に合わせ、踊り手が優雅な舞を見せる富山市八尾町の「おわら風の盆」。秋の風が吹く9月最初の3日間に、豊作を祈って地域の軒先を踊り歩く姿を、優美さに魅せられた人が後に続いたのが見物の起こりだ。ただ、人口約5千人のかいわいに、20万人を超える観光客が押し寄せるようになり、「伝統」と「観光」の間できしみが生じている。
1日午後10時前。石畳の薄暗い通りで、数人の女性ツアー客らが、交通整理をする浴衣姿の男性に詰め寄っていた。「もう帰りのバスの時間。8時半から見られるって聞いてたのに、何も見ないで帰れって言うんですか」。男性は「苦情は旅行会社に言って」とそっけなかった。
1985年に出版された高橋治の小説「風の盆恋歌」が、おわらブームの火付け役といわれる。
ただ、現地を訪れても、踊りは簡単には見られない。阿波踊りのような大規模な祭りと違い、11地区に分かれた街筋のそれぞれで計20人ほどの一行がまちまちに踊る。さらに、「御花」と呼ばれるご祝儀を出す軒先で踊りを披露することも多く、50メートル進むのに1時間かかることも。混雑で身動きできないなか、踊りが回ってくるのを2時間以上待つケースも珍しくない。
鹿児島市などから来た60〜70代の女性グループは「ケータイの時代だし、もっと細かい進路を案内してほしい。見る人に喜んでもらってこその、伝統でしょ」。遠くから高い料金を払って訪れたツアー客には特に不満が多い。
一方、地区をまとめる男性(47)は「自分たちのための伝統だった踊りが、『見せもの』になりつつある。文化を『見せてもらう』という姿勢で来てほしい」と反論する。薄暗いぼんぼりがともる通りで、禁止されたフラッシュの嵐が起こるなど、マナーの乱れも目立つ。「お客さんに来てほしい半分、減ってほしい半分です」
受け入れる側も手をこまぬいていたわけではない。今年から初めて、踊りを見学できる時間の目安を記したチラシを配った。地元観光協会の職員は「これだけのお客さんを無視もできない。いかに観光と伝統を両立させるか、永遠の課題です」と話した。(高野遼)
http://www.asahi.com/national/update/0903/TKY201009030217.html
祇園祭については米山俊直*1『祇園祭』、天神祭については米山俊直『天神祭』、高山祭りについては山本茂実『飛騨の哀歌 高山祭』、川越祭りについては松平誠『祭の社会学』、左大文字祭については和崎春日『左大文字の都市人類学』を取り敢えずマークしておく。
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