酸・甜・辣

張愛玲「談吃與画餅充飢」(in 『重訪辺城』*1、pp.136-155)


この中で、張愛玲は世界の〈味〉を以下のように纏めてしまっている;


「酸徳国波蘭
「甜猶太」
「辣回回」(p.148)


「甜猶太」については、「猶太教領聖餐喝的酒甜得像糖漿、市上的摩根・大衛*2牌葡萄酒也一様、kosher*3(合教規的食品)鶏肝泥都擱不少糖、但是我也在康橋*4買到以色列製的苦巧克力――当然也併不苦、不過不大甜」。
詳しく述べているのは「辣回回」;


辣回回、包括印尼馬来西亜、以及東欧的土耳其帝国旧属地。印度與巴基斯坦本是一体、所以也在内、雖然不信回教。藍色的多瑙河一流進匈牙利、両岸的農夫吃午餐、都是一只黒麺麭、一小鍋辣煨蔬菜。匈牙利名菜“古拉矢”(goulash)――蔬菜炖牛肉小牛肉――就辣。埃及的“国菜”是辣煨黄豆、有時候打一只鶏蛋在上面、做為栄養早餐。観光旅館不供応。
西班牙被北非的回教徒摩爾人征服過、墨西哥又被西班牙征服過、就都愛吃辣椒。中世紀法国南部受西班牙的摩爾人的影響很大。当地的名菜、海鮮居多、大都擱辣椒粉辣椒汁。
辣味固然開胃、嗜辣恐怕還是an educated taste(教練出来的口味)。在回教発源地沙烏地阿拉伯、沙漠裏日夜気温相差極大、白天酷熱、人民畜牧為生、逐水草而居、没有地窖冷蔵食物。辣的香料不但防腐、有点気味也遮蓋過去了。非洲腹地的菜也離不了辣椒、是熱帯的気候関係、還是受北非東非西非的回教徒影響、就不得而知了。(pp.148-149)
まあ突っ込みどころは色々あるのだが。
それから、米国のイラン・レストランについて――「自従伊朗劫持人質事件、美国的伊朗菜館都改名“中東菜館”、此地附近有一家“波斯菜館”倒没改、大概因為此間大都不知道波斯就是伊朗」(p.147)張愛玲のエッセイというのは文字通り〈随筆〉である。少しずつトピックがずれながら、止め処もなく語り続けられる。この〈筆の赴くまま〉という〈随筆〉性が極度に発揮されたのは、読書ノートである「談看書」(pp.26-66)と「談看書後記」(pp.67-94)。これらはここ数年読んだ中でも最も奇怪なテクストに属する。