全体主義で還元主義で

藤沢数希「福祉国家と言う危険な幻想」http://agora-web.jp/archives/1069245.html


多分、藤沢数希を取り上げるのは初めてだと思う。
まっとうな自由主義者保守主義者なら、「福祉」或いは「福祉国家」を批判するにしても、例えばプライヴァシーへの国家権力の介入とかスポンテイニアスな相互扶助の抑圧というような角度から攻める筈だ。後半にはもっともらしいことが一応書いてあるけれど、空虚な〈全体〉のパフォーマンスを引き合いに出して、議論を正当化するなど、とんだ全体主義者だぜ*1。また、藤沢数希と昔の馬鹿な左翼がけっこう類似の思考様式を共有しているということにも気づく。昔の馬鹿な左翼は弱肉強食的な市場イメージを提示して恐怖やルサンティマンを煽っていたわけだが、藤沢は同様なイメージを提示して競争を煽っている。市場や競争を正当化するためのロジックはほかにも幾らでもあるのに。
もう一点言うと、藤沢は個体還元主義という誤謬も犯しているといえるだろう。個人と組織(企業)、企業が織り成す市場、市場を含む(全体)社会といった諸次元の間の飛躍、またそれに伴う創発特性を無視している*2全体主義と個体還元主義というのは一見すると矛盾していそうだが、そうではないだろう。個と〈全体〉を無媒介的に結び付けてしまうわけだから。
See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100712/1278894145