全体主義の誘惑、など

承前*1

欅坂46ナチス」衣裳騒動に関連して。

藤沢文翁「ナチの衣装を着てはいけない本当の理由」http://ameblo.jp/daisuke-fujisawa/entry-12217137993.html


ナチスの軍服を着てはいけない本当の理由」は(ナチスの)「軍服が格好いいからなんです」。


日本で、うっかりコスプレしちゃったり、衣装にしちゃったり、ダンスに取り入れるのは
やはり、どこかで、この格好よさに心惹かれているからでしょう?
右も左もわからない子供や
ヨーロッパに多い教育を受けてない若者
彼らにとって
この軍服はとても魅力的で
憧れてしまうのです。
現在でもネオナチという坊主頭の怖いお兄さんたちがいて
彼らヒトラー信望者による犯罪が多くあるヨーロッパです
さらに言えば、「ユダヤ人に仕事をとられた!」と憎んだ世界大戦の時と
移民の受け入れでゆれるヨーロッパは
少し状況が似てきているのです

つまり彼ら[ヨーロッパ人]にとって
軍服を着ると「被害者が傷つくからいけない」という理由に加えて
若者が憧れかねないあの衣装を着てはいけない
というリアルな恐怖なんです。
ナチスとは、ヨーロッパにおいて
着てはいけない
歌ってはいけない
ポーズを真似してはいけない
もう、社会にさらしてはいけない
いつ、あの亡霊が蘇ってくるかと、今でも恐怖を抱えているのです。
まるで使用済み核燃料のように、なかったことにはできないけど
封印して、人目に晒してはいけない・・・・そういう呪われた遺物であり
そのくらい、一歩間違えば・・・
魅力的な要素が沢山あるのです。
だから、危険なんです
先ず思いついたのは、そうであるなら、非ナチス的或いは非全体主義的な〈かっこよさ〉を提示しなければいけないということだ。以前坂本龍一も述べていたかも知れないけど、ドラマの『コンバット』とかに登場する米兵は独逸兵と比べてだらしない。帽子を斜めに被ったり、釦をはずしたり。しかし、そうしただらしなさナチスとは対立する米国的自由を指示していたりするわけだ。
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また、シャープなデザインで私たちを魅了したのはナチスだけではない*2社会主義リアリズムというと、どんくささそのものである。たしかに。しかし、革命直後の蘇聯はアートやデザインにおいても世界最先端を誇っていた。そうしたアヴァンギャルドは結局スターリンによって圧殺され、あの社会主義リアリズムが取って代わることになる。しかし、少なくともポスターなどのグラフィック・デザインについていえば、1930年代前半まではシャープなデザインで、この頃は東西をひっくるめて世界はアール・デコ*3の時代だったんだなということを直観的に納得させてくれる。また、右の全体主義は左の全体主義から大いに学んでいたということもある。第二次世界大戦中に出された大日本帝国の国際プロパガンダ雑誌Front*4。このエディトリアル・デザインは今日の視点から見てもイケてるものだが、それは元々蘇聯のプロパガンダ雑誌から学んだものだったのだ。また、全体主義に魅了され・加担したデザイナーとして、建築家のル・コルビュジエの名前もマークしておかなければならないだろう*5
ナチス」に話を戻すと、「ナチス」を「使用済み核燃料」のような「呪われた遺物」として、とにかく「封印」或いは禁圧しようとするヨーロッパ的良識は有効なのかどうかを問わなければならない。先ずネオナチなどの極右を活性化させる沃土は経済の不況、経済的格差の増大、社会福祉の劣化なのだから、そっちの方を何とかしろということはある*6。また、タブー化し「封印」するだけだと、「ナチス」はその妖し気な魅力をさらに増大させてしまうのではないか。まさに、暴走族を珍走団と言い換えるような発想が要請されているわけだ。この方面において、チャーリー・チャップリンの『独裁者』*7を超えるものはあるのだろうか。
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