OK牧場?

OK牧場の決斗 [DVD]

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「決闘」からOK牧場を先ず想起する。OK牧場といえばガッツ石松。今回選挙に出馬して落選した元スポーツ選手の方々も人生を擲げちゃいけない。ガッツ石松がコメディアンとしての素質を開花させた契機は自民党から選挙に出て落選して、莫大な借金を背負ったことにある。そういう話ではなかった。
『毎日』の記事;

決闘:容疑で少年3人を書類送検 勢力拡大でと供述−−武南署 /埼玉
 1対1の決闘をしたとして、武南署は14日、高校1年の戸田市の少年(15)ら3人を決闘容疑でさいたま地検書類送検した。少年らは「(所属する不良グループの)勢力拡大のためにやった」と供述しているという。県警によると、決闘罪が制定された1889(明治22)年以降、県内での適用は確認できず、極めて異例としている。

 他に書類送検されたのは、川口市の土木作業員(15)と名古屋市の高校1年の少年(16)。

 容疑は、昨年12月6日午後3時すぎ、川口市藤兵衛新田の綾瀬川河川敷で、事前に約束した上で決闘をしたなどとしている。

 武南署によると、当時、戸田市の少年は、戸田市内の中学3年、名古屋市の少年は川口市内の中学3年で、別々の不良グループのリーダーだった。土木作業員の仲介で「勝った方が相手グループを配下に置く」との条件で決闘したという。2人は薬指の骨を折るなどのけがをした。

 決闘容疑を適用した理由について武南署は「決闘に挑む少年をヒーローとして描くアニメなどが流行し、少年の暴力へのあこがれが強まっている」と話している。【飼手勇介】
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20100715ddlk11040146000c.html

「決闘に挑む少年をヒーローとして描くアニメなどが流行し、少年の暴力へのあこがれが強まっている」というけど、俺は世間に疎いので、具体的にどんなアニメが流行しているのかわからぬ。俺が思いつくのは、大昔のちばてつやの『ハリスの旋風』とかくらいだ。さらに昔の(「アニメ」ではないが)鈴木清順監督、高橋英樹主演の『けんかえれじい』は名作だ。そういえば、「不良グループ」という言葉も古き良き昭和の匂いがぷんぷんしている(Cf. 桜井哲夫『不良少年』)。
けんかえれじい [DVD]

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不良少年 (ちくま新書)

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さて、「決闘」はカール・マルクスマックス・ウェーバーも学生時代にやっていた筈。上の記事を読んで思ったのは、役者が足りないぞということだ。西洋的伝統では「決闘」には立会人が不可欠だからだ。そうでないと、「決闘」という出来事及びその帰結は客観性を獲得できない。この埼玉の「決闘」に立会人はいたのか。或いはオーディエンス或いはスペクテイターは? この問題は実は、社会的紛争の公正で権威ある解決、或いは自由競争と公的規制の兼ね合いといった問題に敷衍できそうな気もするのだが、ここら辺にしておく。
ところで、今回の警察の態度は(少なくとも江戸時代以降の)日本的権力にとっては正統的な態度といえるのではないか。要するに〈喧嘩両成敗〉なのだから。まあ、マイケル・ジャクソンの”Beat It”のようにダンスによって「決闘」を止揚するというソリューションを警察権力に期待してはいけないのだが。でも、対立を〈喧嘩両成敗〉ということで上から暴力的に抑圧するのではなくて、より非暴力的で面白い表現へと誘導していくという社会的努力は必要だろうと思うのだ。「ユンケル」対決でもいいよ。どっちが先に40本飲み干すか*1
「決闘」に関しては、山内進『決闘裁判』もマークしておくべきだろう。
決闘裁判―ヨーロッパ法精神の原風景 (講談社現代新書)

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