八方なんとか

承前*1

http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2010-07-02


菅直人首相の消費税を巡る発言は私の理解を超えている。消費税を引き上げるとして、何のためにやるのかということをあまり考えていないんじゃないか。それと関連して、消費税引き上げの効果を相殺するようなことばかり、発言している。法人税を下げることで相殺。さらに、消費税の逆進性を緩和するとのことで、低所得者には消費税を全額還付するという。日本人に領収書(レシート)を捨てないでちゃんと保管することを身につけさせる規律訓練なのかもしれないけど、年収400万未満の人は全額還付するということだと、個人年収の平均が400万台なので、かなりの人が恩恵を被ってしまうことになる*2法人税を下げて、低所得者に還付して、いったい消費税の効果はどれだけ残っているのか。だったら、据え置いておいた方がいいのでは?
これは菅直人氏が悪人だとか無知だということではないだろう、多分。思うに、〈嫌われること〉を怖れる心性の帰結。企業に対しても富裕者に対しても貧乏人に対しても〈いい人〉であろうとして、その結果、誰からも好かれない。そういう感じだ。〈いい人〉なんだけど最終的にはモテないというキャラはドラマなどでは必須なのだろうけど、この場合さらに深刻なのは、政府の税務政策それ自体への信頼が失墜する虞があるということだ。だから、税制に関しては、もう完全に沈黙を守るべきだろう。このままだと、どんな発言をしても、支持が下がることはあっても上がることはないのではないか。


さて、日本共産党しんぶん赤旗』の記事*3。日本企業が「研究開発減税」や「外国税額控除」という「優遇税制」によって「実効税率」よりもかなり低い税率しか払っていないという。それはそうだろう。ただ、「研究開発減税」や「外国税額控除」というのはそれ自体として不正なものではない。「外国税額控除」は二重課税を避けるためである。ただ、「外国企業に優遇税制を敷いている途上国で法人税の減免措置を受けた場合でもその分を払ったとみなして控除される場合があります」という指摘があるが、それはどのくらいの比率なのだろうか。「研究開発減税」は必ずしも「大企業」のみに有利だとはいえないのではないか。神野直彦氏みたいに、たしかに「法人税」それ自体は安くはないが「社会保障の負担」を抱き合わせて考えれば、世界的に見ても高いとはいえないという正攻法でいけばいいものを*4、小技を使おうとしてふらついてしまったという感じだ。多分、神野直彦氏のロジックには城繁幸*5だって突っ込みを入れられないだろうよ。