Charles Saatchiの寄贈

Mark Brown “Charles Saatchi donates 200 art works to the nation” http://www.guardian.co.uk/artanddesign/2010/jul/01/saatchi-gallery-art


世界的な現代アートのコレクターであるチャールズ・サーチがインスタレーションを中心とするアート作品200点、2500万ポンド相当を、ギャラリー*1ごと英国国家に寄贈すると発表した。Saachi GalleryはMOCA London (Museum of Contemporary Art, London)と改称される。
チャールズ・サーチは新自由主義との関係で興味深い人物だ。先ず、世界中の新自由主義者がチャールズ・サーチに足を向けて寝ることは許されない。バグダッド生まれのユダヤ人であるチャールズ・サーチは1970年に弟のモーリスととともに広告代理店Saachi & Saachiを創設したが、1979年の英国総選挙でマーガレット・サッチャーの保守党が勝利したのには、チャールズが書いたLabour isn’t working.(労働党は機能していない/労働者は働いていない)というコピーが果たした役割が大きかった。チャールズ・サーチは新自由主義の擡頭を助けるとともに、後には新自由主義によって自ら創設した会社を追放されてしまう。1990年代に入って利益率が低下しているにも拘わらずモーリス・サーチが自らの報酬の引き上げを要求したことを契機として、1994年に米国の機関投資家が支配する株主総会や取締役会によって、サーチ兄弟は創業者でありながら会社を追放されてしまう。しかし、会社幹部の多くが兄弟の後を追って辞職してしまい、日本のセガを含む大手クライアントの多くはSaachi & Saachiとの契約を打ち切ってしまい、Saachi & Saachiの業績と株価は急激に下落してしまった。さらに、21世紀に入ると、Saachi & Saachiは追い出されたサーチ兄弟が新たに創設したM & C Saachiにその規模の面でも抜かれてしまう。現在では、兄弟は広告業から手を引き、兄は現代アートパトロンに専念し、弟は貴族院議員になっているようだ(岩井克人『会社はこれからどうなるのか』、pp.276-279)。
日本での知名度は知らないが、チャールズ・サーチは現代アート関係者の間では大変なセレブで、アートに興味を持っているなら彼のサイトを常にチェックしなきゃ駄目だよということは何人もの人に言われたことはある。

会社はこれからどうなるのか

会社はこれからどうなるのか

ところで、倫敦のNational Galleryでは泰西名画の贋作ばかりを集めた展覧会Close Examination: Fakes, Mistakes and Discoveries*2が開催されているという;


Maev Kennedy “National Gallery: an art exhibition where nothing is what it seems” http://www.guardian.co.uk/artanddesign/2010/jun/29/national-gallery-art-exhibition-fakery
Jonathan Jones “Art review: National Gallery's forgeries are the real deal” http://www.guardian.co.uk/artanddesign/2010/jul/01/national-gallery-forgeries-art-review