戦場にかける「観音」

『読売』の記事;


「戦場にかける橋」近くに巨大観音、景観論争白熱


 映画「戦場にかける橋」の舞台となったタイ西部カンチャナブリの泰緬鉄道のクワイ川にかかる鉄橋付近に、宗教団体が巨大な観音像などの建設を始め、地元住民や環境団体などが「歴史的景観を壊す」と反発、建設差し止め訴訟を起こす構えで、景観論争が白熱化している。

 この宗教施設は、バンコクの宗教団体が6月、鉄橋から約30〜75メートルの距離に着工。高さ約18メートルの観音像や礼拝堂、休息所を来年1月に完成させる予定だ。

 周辺住民への事前説明はなく、環境保護団体「カンチャナブリ保全グループ」のピナン・チョティロセラニ代表が「観光客の寄付目当て。歴史遺産のそばにはふさわしくない」と建設反対運動を始めた。

 カンチャナブリ観光産業協会によると、建設地域は農業専用区域で、建築基準法に違反するという。これに対し、宗教団体側は「戦争犠牲者を弔うため」と建設の理由を説明、「行政当局から建築許可を得ており問題はない」と反論している。

 宗教団体はまた、施設が見えないように植林する案も提示しているが、地元住民側は「信用できない」とし、対立したままだ。


 地元は、橋の世界遺産登録を目指しており、同観光産業協会のスリン・ジャンピアン会長は、宗教団体と、建築を認めた行政当局を相手取り、裁判を起こす構えだ。

 カンチャナブリには、戦争の記憶をしのび、年間約600万人もの観光客が訪れる。橋の撮影ポイントから見える観音像には困惑気味で、英国人女性(19)は「厳しい自然を切り開いて橋が架けられたとのイメージが崩れた」と、がっかりした様子。ピナン代表は、「戦争の悲惨さを率直に伝える歴史的な環境は、そのままの姿で維持されるべきだ」と話している。

 ◆泰緬鉄道=全長415キロ。旧日本軍が、英軍などの捕虜やアジア人労働者を動員し、タイ―ビルマ(現ミャンマー)間に、1942年7月〜43年10月の突貫工事で建設。建設に伴う死者は7万人を超えるとされる。現在はタイ側の一部が利用されている。鉄橋は太平洋戦争中に連合国軍に爆破され、戦後かけ直された。(田原徳容)

(2009年8月7日08時44分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090806-OYT1T00956.htm

バンコクの宗教団体」――「観音」を信仰するのは大乗仏教であり、タイやビルマで一般的な上座部仏教ではないよね。