石紀美子「米国に台頭する「新民族」」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1169
「最新の国勢調査によると、2つ以上の民族の血を引く人のグループ、つまり「混血の人たち」(multiracial)が、米国で最も急速に拡大する新しい「民族グループ」となった」。統計上はmultiracialの人は700万人であるとか。
また、共和党が白人+基督教保守派を支持基盤とするエスニック政党になりつつあるという指摘も興味深い。
ただ、multiracialというのが注目されたのは既に10年以上前、タイガー・ウッズがブレイクしたときでは? また、post-raceということだと、人種からエスニシティへ鍵言葉が移ったのは、ヒスパニックの増加が大きいのでは? ヒスパニックの人々は西班牙語を話すとか中南米の出身ということによって定義される。従来の「人種」という枠組では、白人だったり黒人だったりインディオだったりする。
石さんは、オバマではなくヒラリー・クリントンを支持した民主党内の(公民権運動以来の)古参黒人活動家とオバマのような中産階級出身の新世代の黒人活動家とのギャップにも言及している。旧来の黒人についてのステレオタイプ的なイメージを欲望しているのはほかに、白人ヒップホップ・ファン? カニエ・ウェストも、ラッパーはスラム出身じゃなければならないというステレオタイプ的要請に悩まされたと語っていなかったか。
さて、multiracialということで、
康慨「追尋一切皆有可能的上海」『東方早報』2009年6月24日
現在米国でベスト・セラーになっている、Lisa Seeの新作小説Shanghai Girls(『上海女郎』)を紹介した記事。
1955年に巴里に生まれたLisa Seeはその容姿にも亜細亜系の面影はなく*1、中国語も話せないが、一貫して華人であることに拘ってきた。代表作は、広東省から苦力として渡米した先祖のことを記述したOn Gold Mountain: The One Hundred Year Odyssey of My Chinese-American Family(1995)。湖南省の瑶族に伝わる「女書」を題材にしたSnow Flower and the Secret Fan(2005)。『牡丹亭』の筋書きを借りたPeony in Love(2007)。
Lisa Seeは中国語表記では「鄺麗莎」*2。渡米した初代は「鄺泗」(鄺家の四番目の子ども)と呼ばれ、米国入国の際にFong Seeと記入したが、入国管理官は中国式の姓→名という順序が理解できず、Seeを姓だと思い込んでしまい、以後Seeが米国におけるfamily nameとなった。「鄺」は「方氏」の一派で、台山や南海*3に多い姓。
石剣峰「“這本書補充了中国電影史”」 『東方早報』2009年6月24日
韓国の主婦、朴圭媛は偶々自分の「外祖父」がかつて「中国電影皇帝」と呼ばれた役者、金焔であったことを知り、10年以上かけて、中国、韓国、米国、カナダで取材と資料蒐集を重ね、祖父の伝記『尋找我的外公:中国電影皇帝金焔』を書き上げ、2003年に韓国の「年度紀実文学大奨」を受賞した。これって、韓国では有名な話なのか。なお、朴圭媛にはほかに短編小説集『上海之涙』があるという。