永井荷風/王次回(メモ)

邵毅平「永井荷風漢詩」『書城』2009年3月号、pp.76-79


永井荷風はその随筆「初硯」において、明末の詩人、王彦泓(王次回)を中国のボードレールとして、その『疑雨集』を『悪の華』に引き比べて賞賛している。王次回は、ニュージーランド生まれの漢学者Patrick Hanan(韓南)*1によっても、「中国のボードレール」と称されている(pp.76-77)。しかし、荷風自身の漢詩は杜牧に影響を受けた「清爽明麗」な作風であるという(p.78)。曰く、「所以、如果説王次回対永井荷風有甚麼影響、那這影響也不在他的漢詩裏、而是在他的小説、随筆、日記等等裏、比如《雨瀟瀟》、比如《墨東綺譚》、比如《断腸亭日乗》、比如《断腸亭雑稿》……」(p.79)。

悪の華 (新潮文庫)

悪の華 (新潮文庫)

19歳の永井荷風が上海に遊んだときに詠んだ『滬游雑吟』から幾首かが引用されている(p.77);

当年遺跡已榛荊
誰弄黄昏笛一声
千歳興亡在青史
乱煙荒月古申城
(「申城懐古」)

楓葉蘆花両岸風
寒潮寂寞晩来通
天明月孤村渡
舟子吹燈話短蓬
(「浦東」)

孤帆無影水悠悠
客路猶為汗漫遊
暮笛一声楊樹浦
煙零雨砕過残秋
(「楊樹浦」)

黄浦江頭瑟瑟波
年光夢裏等閑過
天涯却喜少知己
不省人生誉毀多
(「題客舎壁」)

ところで、「初硯」は岩波文庫の『荷風随筆集』に入っていたっけ?

荷風随筆集 上 日和下駄 他十六篇 (岩波文庫 緑 41-7)

荷風随筆集 上 日和下駄 他十六篇 (岩波文庫 緑 41-7)

荷風随筆集 下 (岩波文庫 緑 41-8)

荷風随筆集 下 (岩波文庫 緑 41-8)