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市川崑*1の『細雪』を観た。1983年の映画。その頃、この映画は観なかったが、谷崎潤一郎の原作小説を読んだ。
蒔岡家の四姉妹を、岸恵子、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子が演じる。この頃は、吉永小百合が嫁入り前の娘を演じていたのだというのは少し感慨深いが、現在もし『細雪』を撮るとして、四姉妹に適う女優を果たして4人も集められるかしら、とも思った。男優としては、石坂浩二も伊丹十三も、女系家族となってしまった家への勤勉かつ気弱な入り婿を、サラリーマン/商家のお嬢様という階級的な差異も含めて、巧く演じていると思った。また、江本孟紀が出る場面は少ないものの物語の流れを決定づける役(華族の次男で、吉永小百合の結婚相手)を演じていることも書き添える。
勿論、谷崎松子夫人が台詞を監修しているものの、この映画は谷崎の小説を完全に映画化しているわけではない。例えば、私が原作でかなり印象に残った水害のシーンは出てこない。また、原作ではかなり重要な役割を占めているであろう女中の視点もオミットされている。さらに、谷崎潤一郎は『細雪』を書くに当たって、新聞のバックナンバーから当時の天気と映画や芝居の日程を徹底的に調べたというが、観劇のシーンもない。
「うさこ」さんは『悪魔の手毬唄』に触れて、「市川さんの作品の風景、カメラの暗さと空間の奥行きはいつもたのしみ」と書いていたが*2、これはリメイク版『犬神家の一族』でもそうだったが、『細雪』でも堪能した。特に上本町の本家。因みに、この伊丹十三や岸恵子が住む本家と石坂浩二と佐久間良子の夫婦及び他の妹たちが住む芦屋の分家は、(光学的な意味における)暗さ/明るさという対立をなしている。さらに、屋内に対立する屋外のシーンでは、京都嵐山の桜/箕面の紅葉/晩秋の嵯峨と(古手川祐子が押しかけ同棲をする)工場街の風景が対をなしているか。また、この映画に緊張を与えているのは、実は画面には出てこない物事なのかも知れない。時代は昭和13年で、戦争はまだ海の向こうの中国大陸の出来事でしかない。この映画では、戦争は例えば、お見合いの席での雑談として、また風に舞う新聞紙の見出しとして、間接的に言及されるにすぎない。また、映画を見終わったときに、私たちはあと数年したらこの四姉妹ももんぺを穿くことになるのかとか、さらに数年したら関西にしても(本家の夫婦が転勤のために移住する)東京にしても空襲があって、『火垂るの墓』の世界が始まるんじゃないかという予感をせざるをえない。しかし、この私たちの後知恵的な予感もこの映画に緊張や切なさを与え、美しさを引き立てているということも否定できないだろう。
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