「13金髪女郎」

Andrew James Art*1で、倫敦在住の韓国人アーティスト、Dorothy M. Yoon(尹美娟)の「13金髪女郎(13 of Blondes)」を観る。
写真術が内側に向かうとき、それはセルフ・ポートレイトへの欲望となるか。 それも現にはそうではない、ありえた、そうあったらいいなという自己のポートレイト。Dorothy M. Yoonがシンデレラ、パリス・ヒルトン、ダイアナ、マリリン・モンローマリー・アントワネット、エリザベス1世、(『ベルばら』の)オスカルに扮した一連の写真群は、その意味では、シンディ・シャーマン森村泰昌の系譜に連なっていると見ることもできる。釜山生まれの彼女は子どもの頃に”I always thought I would also be a star like Marilyn Monroe, James Dean or even my own Barbie Doll.”*2 このように、亜細亜人の西洋人、金髪に対するコンプレックスそれ自体を客体化しているということもあるのだろう。
さて、上で述べたようなポートレイトだけでなく、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の構図とポーズでもって、金髪女性が並ぶという系列の作品もある。その中の”13 of Blondes”という作品では背景に白頭山の風景が使われている。韓国人にとって”mythical significance”がありながら北朝鮮領内にあるために韓国人が自由に行くことができない山。西洋(他者)が身近で自民族の象徴(白頭山)が実は遠いというパラドックス
作品の多くには、韓国語(ハングル)の題辞が添えられている。これは専門の書道家に依頼したものであるらしいが、ハングルが読めない上に、英訳も漢訳もないので、その意味はわからず。

*1:http://andrewjamesart.com/

*2:Jenny Hammond “Venus to Marilyn Monroe—Iconic blonds with Asian faces” Shanghai Daily 4 March 2008. 何故そんなことを思っていたかというと、外国映画に出てくる西洋人の役者たちがみな(吹き替えのために)完璧な韓国語を喋っていたからだという。