大学は強制学習収容所ではないでしょその他

承前*1

「こんな意見も」さん、情報の御教示ありがとうございます。


http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/blog/node/1600


ところで、


(前略)
本件の言い出しと思われる川瀬貴也という人物にしても、「除籍」という権威を振りかざしている。これが唯一の特権の如き浅薄な誤解をしている。教育者ならば、そのような袋小路に陥った学生こそ、「特待生」として、懇切丁寧に導いてやらねばならないと、私は思う。仮に彼が教育者ならばである。
論文を剽窃する教授と、意に沿わぬ学生を除籍する彼に、どれほどの差があるだろうか。私には同レベルとしか見えない。

投稿者:作文大好き (未認証ユーザ) 投稿日時:2007-08-20 20:04

という発言ですが、私は川瀬氏が「権威を振りかざしている」とは思いません。「作文大好き」という人は川瀬氏のblogのテクストをちゃんと読んでいるのかね。それを読めば、この「唯一の特権の如き」云々という理解には至らないと思いますがね。「既に明らかなように、私はこうしたことがばれたら、「除籍」でも仕方がないとは思っていますが、事実のレヴェルでいえば、川瀬氏は自分の「意に沿わぬ学生を除籍する」といっているわけではありません。その根拠は(必ずしも明示的とは限らないけれど)ある規範が侵犯されたらばということでしょう。その規範というのは、文部科学省の役人や一般読者を含め、かなり広範に共有されていると思う。勿論、そうした場合でも学生を庇うという先生がいらっしゃっても、そのことを非難するつもりはありませんが。さらにいえば、「除籍」ということを1人の教員の一存で決定できるということはありえません。
さて、「教育者ならば、そのような袋小路に陥った学生こそ、「特待生」として、懇切丁寧に導いてやらねばならないと、私は思う」ということだけれど、『読売』の記事にあった「依頼者の多くは、教員に放任扱いされ、課題にどう対処すべきか悩んでいる」という「代行業者」の言い分を踏まえているのだろうけど、それは違うと思う。大学というのは強制収容所でも刑務所でもないのだから、自発的に質問したり、コメントを要求したりする学生以外に「懇切丁寧に導いてや」る義務は教員にはないし、越権行為でもあると思う。授業やゼミに出てこない学生に対しては放置というのが正しい態度だと思う。勿論、質問されたのに無視されたとか指導の名の下にハラスメントされたというのは問題だけど、それは問題のレヴェルが違う。
以上、もし弁護になってなかったらごめんなさい<川瀬さん


「卒論代行」問題について、岡本真氏*2鈴木功眞氏*3伊奈正人*4、柴野均氏*5の文章を読んだ。岡本氏は


すでに指摘されているが、代筆された卒論を見抜けない大学教員がいるとはあまり思えない。きちんと学生に向き合って指導している限り、代筆論文にごまかされてしまうことは考えにくい。だが、万一まともに指導せず、提出だけ受けていれば、それは見抜けなくても当然だろう。そのような職務を放棄している大学教員は数少ないと思いたい。
と書いている。ばれないのがおかしいということは鈴木氏や伊奈氏も共有しており、私もそう思った*6。また、柴野氏は

(略)卒論というのは大学教育のなかでも一番おもしろい部分なのに、そこをスルーしてしまっては意味がない。何のために大学に入学するのか、そこを考えたほうがいい。

卒論代行を依頼する学生は、本来やはり大学には縁のなかった人だろう。そういう人間までかき集めないと大学が存続できなくなりつつある、と考えるべきなのかもしれない。

と書いている。


ところで、「代行」といえば、国士舘大学総長だった柴田梵天が論文を「代作」させたが、その「代作」がまた盗作だったということがありましたね;


 1978年6月23日の参議院文教委員会の議事録http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/084/1170/08406131170016a.html