承前*1
- 作者: 見田宗介
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/04/20
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これは戦後の日本社会を「「理想」の時代」(「プレ高度成長期」)、「「夢」の時代」(「高度成長期」)、「「虚構」の時代」(「ポスト高度成長期」)に分けた文脈で語られているもの。なお、この枠組みは大澤真幸氏のオウム論『虚構の時代の果て』でも使われている。
大正期(一九二〇年代)に形成された日本の「歌謡曲調」という、「ヨナ抜き短音階」を基調とする半近代的=半伝統的な曲調にとって代わって、純粋に西欧的、近代的な曲調がこの時期はじめて、そして急激に、メジャーの流行歌の支配的な傾向となった。一九六一年に、それまでの「歌謡曲調」(演歌調)の感性世界を破砕するような流行をみせた「上を向いて歩こう」(坂本九)と「スーダラ節」(植木等)が先陣を切った。植木等は、演歌の発声の基本をなしている「浪花節」の発声法と、ちょうど対極の発声法をとった。浪花節(→演歌)の発声は、肺から息がでてくる途中で、のどにも鼻にも最大限の抵抗をつくり、声を幾重にも屈折させながらしぼりだすような発声です。これに対して、「ビノサンをのんで鼻づまりをなくしたような声」と寺山修司が評した植木等は、のどにも鼻にもなに一つ抵抗がなくて、声がスポンとつきぬける歌い方をする。この抵抗感の非在こそ、この時代の感覚だった。
この系譜の先駆をなした一九六〇年の「ありがたや節」は、抵抗感を無抵抗感に転回する大衆の反語の笑いを表出していたが、六一年の「スーダラ節」「上を向いて歩こう」から、六二年の「いつでも夢を」「可愛いベイビー」「恋しているんだもん」、そして六三年の大ヒット「こんにちは赤ちゃん」に至って、屈折の痕跡は少しずつきれいに払拭されて、この「ピンク色」の〈夢の時代〉の、大衆の気分をいっそう純化して表出する声となります(pp.82-83)。
- 作者: 大澤真幸
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- 作者: 姜信子
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ところで、http://homepage.mac.com/biogon_21/iblog/B1604743443/C1534355107/E20060424230708/index.htmlに、高原基彰氏の『不安型ナショナリズムの時代』へのコメントあり;
例えば、日韓条約を巡る社会党のベタに国益主義的な対応とかはこの証左となるだろうか。さらにいえば、例えば中国共産党の「軍国主義者」と一般の(その犠牲者でもある)「日本人民」を区別するという戦略があって*2、日本人(左翼)もそれに乗ってしまえば、「贖罪」など気にすることなく、かつての「軍国主義者」やその末裔としての右を叩いていればいいということはあったのだと思う。もうひとつ言えば、1970年代までは、多くの日本人にとって「アジア」というのは抽象的な存在だったということがあるだろう。日本人が誰でも「アジア」に具体的に遭遇するようになるのは、ボーイング747の導入と円高による海外旅行の大衆化以降だろう。
「左翼」つながりでとりあえず書いておくことにするが、先日読了した『不安型ナショナリズムの時代』(高原基彰、洋泉社新書y)について。「中間層の形成」と「社会の流動化」とのタイミングの違いという観点から日中韓を比較した図式はなかなか説得力がある一方、読んでいてずっと違和感が拭えなかったのが“アジアへの贖罪意識が日本の左翼にとっての「賭け金」であった”という著者の認識。ぶっちゃけて言えば「これが若さか」と。80年代までの左翼の反戦運動は、(ヴェトナム戦争に日本が加担しているといった論点はあったにしても)圧倒的に「被害者意識」に導かれたものではなかったか? 例えば本多勝一の『中国の旅』が1971年、森村誠一の『悪魔の飽食』が1981年。これらが大きな反響を呼んだのは、それまで南京事件や731部隊について語られることがあまりにも少なかったことを示している。従軍慰安婦問題がマスコミにとりあげられるようになったのはさらにその後である。単純化して言えば、一方で冷戦の緊張が緩むことによりアジアでも日本(軍)による被害を自由に語ることができる状況が到来し、他方でマルクス主義に依拠する左翼の敗北が明白になり左翼が別の道を模索するようになって(言い換えれば文化左翼化して)はじめて、「アジアへの贖罪意識」は日本の左翼にとっての重要な賭け金となった…というべきではないだろうか(その意味で、「いつまで謝ればすむんだ」という主張は間違ってもいるわけである)。
不安型ナショナリズムの時代―日韓中のネット世代が憎みあう本当の理由 (新書y)
- 作者: 高原基彰
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