「宮出し」中止、それから博徒についてのメモ

承前*1

『読売』の記事なり;


三社祭の宮出しやめます」神輿乗り問題で氏子総代会
 江戸三大祭りの一つ、東京・浅草の「三社祭」で、神輿(みこし)によじ上って騒ぎを起こした担ぎ手が相次ぎ逮捕されている問題で、浅草神社の氏子総代会は、来年の三社祭でメーンとなる本社(ほんじゃ)神輿の担ぎ出しを中止する方針を固めた。

 警視庁は暴力団関係者が威勢を誇示するケースが目立つとして摘発を強めており、中止はこうした情勢を考慮したもの。神社側は来月の常任理事会で正式決定する。

 三社祭は毎年5月に行われる。中止されるのは、3日間の開催のうち、最終日に境内で行われる「宮出し」と、地元44町会を巡る「神輿渡御(とぎょ)」。

 いずれの行事も、神社のご神体を乗せた本社神輿3基を使う。毎年、全国から集まった約1万人の担ぎ手がこれを取り囲み、その勇壮な光景が祭り最大の見せ場になっていた。

 神社側は今年5月20日の両行事を前に、担ぎ手が所属する約40の同好会に神輿に乗らないよう求めたが、禁止令はあっけなく破られ、約20人が次々に飛び乗って大声を出したりして騒動をあおった。

 警視庁生活安全特捜隊と浅草署はビデオカメラの映像などから、これらの男たちを追跡。今月中旬までに、担ぎ手計7人を都迷惑防止条例違反(混乱誘発)容疑などで逮捕した。今後、逮捕者はさらに増える可能性がある。

 また、逮捕者らの供述に基づき、浅草を拠点とした指定暴力団住吉会系3次団体の組事務所を捜索したところ、複数の同好会名簿が見つかり、暴力団組織との関係についても調べを進めている。

 三社祭での担ぎ手の神輿乗りは1980年以降に始まったとされる。浅草署によると、1997年以降では、同様の容疑で計約40人が逮捕されている。神社側は今回、宮出しのみを中止する方向で検討していたが、警察側が難色を示したため、神輿渡御も含め中止することにした。来月初旬にも開く常任理事会を経て、同署に決定を伝える。

 神社側はこれまで「ご神体に尻を向けたり、踏みつけたりするのは神様を冒涜(ぼうとく)する行為」として、同好会側に再三注意してきた。全国の祭りで、ご神体をまつった神輿に人が乗って騒ぐことが常態化した例は他にないという。

 三社祭には例年約140万人が見物に訪れる。祭り自体は来年も開催されるが、メーン行事の中止は客足に大きく影響するとみられる。町会所有の100基以上の神輿が街を練り歩く行事(毎年2日目)は、来年も行われる見通し。

(2007年6月23日14時32分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070623i507.htm

ところで、上の記事でも言及されている「暴力団」すなわちやくざだが、組織というかアソシエーションでありながら、その存在目的(raison d’etre)というのが全然はっきりしない。これは社会学的にも経営学的にも研究に値するのではないだろうか。やくざは色々なことをやっている。しかし、それらはみな〈しのぎ〉にすぎない。何のためにやくざ(組織)は存在するのか。これは全然明らかではないのだ。組織或いは団体にはその組織や団体の存立に関わる目標がある。宗教団体なら救済であり、政治団体なら権力の奪取とか革命。では、やくざの目的は? 因みに、ヤコブ・ラズの『ヤクザの文化人類学』で研究されているのは、実は「テキヤ」であって「やくざ」ではない。
ヤクザの文化人類学―ウラから見た日本 (岩波現代文庫)

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テキヤつまり香具師は、神崎宣武『盛り場の民俗史』
盛り場の民俗史 (岩波新書)

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で指摘されているように、基本的に「商人」であり、また藝人にも連なるので、遊び人を自称するやくざとは区別されなければならない。また、10代から「新宿内藤町にある純正博徒が開帳する常盆」に出入りしていた作家の森巣博氏の言葉を再録する;

賭場の親方は昔かたぎで、若い衆が「向こう打ち(他の博徒が開帳する盆で博奕を打つこと)」に行ったとわかると、頭から湯気を立てて怒った。「あのヤロウ、博奕打ちのくせして、博奕なんか打ちやがる」と。
どうやら博奕打ちは博奕を打ってはいけないらしい。ダンベイ(旦那衆)に博奕を打たせ、そこから上がるカスリ(控除あるいはコミッション)でシノギをするのが、正統の博徒のようだ。それで親方から勧誘されたのだが、博徒にはならなかった。博奕ほど面白いものはない、と思っていた。博徒になったら、大好きな博奕が打てなくなってしまう(『クーリエ・ジャポン』2006年6月号、p.50)。
多分、上の件に関しても、問題の一端にはやくざと「旦那衆」、或いは一般的に言うと、「旦那衆」が構成する地域共同体の変容が関係しているのかも知れない。