『ZERO90』というフリー・マガジン(楽天発行)が出たようで、その0号の特集は「やっぱり不二家が好き。」。あの「ペコちゃん」を初めとする昔の不二家のパッケージやグラフィックが紹介されていて、とても楽しい。奈良美智風の不機嫌な「ペコちゃん」というのもあったんだ!
さて、その中でKenichi Hatsumiという方が「70年代に幼少期を過ごした僕ら世代にとって、不二家の商品は日常のあらゆる場面に登場する一番身近なお菓子だった」として、
と書いている。東京に育った人の空間感覚のサンプルとしてメモしておく。
(略)人生の節目節目に不二家があった、っていうか、要するに僕らは不二家に育てられ大人になったようなものだ、ってのは過言? といっても、僕が生まれ育った恵比寿の商店街には不二家のお店がなくて、だから「ANYTIME WITH Peko!」というわけにはいかなかった。あのペコちゃん人形の顔をユサユサできるのは、主に親に連れられて銀座に「お出かけ」したとき。渋谷に買い物に行くときなんかは普段着OKなのに、当時の大人たちにとって「銀座は特別だから」ということらしくて、サスペンダーつき半ズボンにピカピカの革靴という「よそいき」コスプレを強要される。だから数寄屋橋の交差点でペコの頭にタッチするときは、決まって「よそいき」気分。僕にとってペコちゃんはいまだに「特別な町=銀座」の象徴で、つまりは東京の象徴。「東京の中心にはペコちゃんが立っている」というシュールな感覚は、この歳になっても消えない(p.14)。
ところで、「ペコ」の語源は東北弁で牛を意味する「ベコ」であるという(p.15)。
さて、同じ雑誌の清絢という方のコラムで、御茶ノ水というか駿河台の「喫茶 穂高」が未だ健在であることを知る(p.37)。私は「穂高」の前をこれまでに少なくとも3000回以上通過しているが、実は一度も入ったことがない。コラムによれば、串田孫一がこの店の常連で、店のマッチのイラストレーションは串田孫一によるもの。