今度は、加藤祐三「近代国際政治の成立と崩壊」(in 加藤祐三編『近代日本と東アジア』筑摩書房、1995)からの孫引き。

- 作者: 加藤祐三
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
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ここでいう「アジアの反動の拠点」云々というのは朝鮮戦争という時代状況と関係しているだろう。
八十余年前、日本はアジアの進歩の先頭に立っていた。いま日本はアジアの反動の拠点にされつつある。二百数十年の久しい間、封建専制の下にあり、他の文明世界からほとんどまったく切りはなされて、せまい小さい島々にとじこめられていた日本人が、十九世紀の後半に突如として近代諸国民の仲間入りをして、またたくまになしとげたる巨大な進歩を、いたるところにあらわした民族的活力は、まことに目覚ましいかぎりであった。(略)しかし恥ずかしいことに、われわれは、専制と野蛮を一掃することに成功しなかった。(略)近現代の日本の歴史は、誇るべき民族的光栄にかがやいているとともに、恥ずべき国家的汚辱にけがされている。なぜ現在の隷属と貧窮におとされ、文明の罪人という最大の不名誉をも受けねばならないのか。(略)(cited from p.9)
この文章を読んで感じるのは、先ず漲る愛国的パッションとプライドである。勿論、或る立場から眺めれば、〈自虐性〉を感じることもあるだろう。しかし、ここではプライド(「民族的光栄」)と自虐(「国家的汚辱」)とは不可分のものである。また、私と井上先生との距離よりも井上先生と右翼な人たちとの距離の方が近いのだなとも感じてしまう。というか、ここで宣せられているようなプライドとか自虐とかを振り払うことが、私にとっては、les choses japonaisesを肯定する前提だったわけだ。
そういえば、高校3年のときに岩波新書の井上清『日本の歴史』全3巻を読んだのだが、今も品切・絶版になることなく、売れ続けているんですね。

- 作者: 井上清
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