「支持」が書けない

『毎日』の記事;


漢字習得:小6の9割超が「支持」書けず 学会調査

正答率の低い漢字と正答率 小学校5年生で学ぶ「支持」の漢字を書ける小6児童はわずか7%−−。こんな漢字の読み書きをめぐる実態が日本教育技術学会の調査で分かった。読み、書きともに、日常生活で使用頻度が低い漢字は正答率が低くなる傾向にあり、同学会は宿題だけでなく、授業で指導する重要性を指摘している。

 調査は04年4〜5月、全国480の公立小中学校(延べ3万7835人)の協力を得て、学習指導要領に示されている学年別配当漢字(1006字)の学年別習得状況を調べた。

 平均正答率は「読み」が各学年ともに90%台を維持したが、「書き」は学年が上がるにつれて落ち込み、4年生以上では6割台だった。高学年では、日常生活に使用することの少ない漢字で誤りが目立つ。また、練習法では、授業で練習したクラスが宿題で練習したクラスよりも最大で15.4点(5年)上回り、点差が大きくなっている。

 調査した千葉大教育学部の明石要一教授は「生活に密着していない漢字は、放っておくと定着度が低くなる。高学年の正答率は、先生の指導が影響している」と指摘している。【高山純二】

毎日新聞 2007年5月7日 20時42分 (最終更新時間 5月7日 23時53分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070508k0000m040091000c.html

本当に「生活に密着していない」なら分からなくてもまあどうでもいいということになる。ただ、「正答率の低い」例として掲げられている「支持」、「記述」、「沿線」というのは決して「日常生活に使用することの少ない漢字」ではないだろう。これって、支える、述べる、沿うという漢字の意味を教えないで、丸暗記させている結果ではないのか。因みに、誤答の方で「正答」よりも複雑な漢字が使われているのが可笑しい。「支」ではなくて「指」、「述」ではなくて「術」、「沿」ではなくて「遠」。
また、この調査自体がいかがわしい感じがする。というのは、小学校4年で「正答率」が低かったとされる「目指す」だが、「目差す」が間違いの例として掲げられている。しかし、『広辞苑』では「めざす」は「目差す」と「目指す」のどちらの表記も許容している。つまり、「目差す」と書いた子どもは冤罪なのである。それとも、『広辞苑』に喧嘩を売るつもりか。また、「方角」の誤答の例として、「角」の真ん中の棒が突き出ている字体が間違いの例として挙げられているが、そもそも中国では簡体字繁体字とも真ん中の棒を突き出して書くのが〈正しい〉書き方だし、香港・台湾で使われている『康煕字典』に準拠した繁体字は漢字に関しては正字としての規範的権威を持つと考えられるので、その限りでは、ここで「正答」とされたものが実は誤答だということにもなる。それはともかくとして、「角」を手書きで書くときは、真ん中の棒が突き出るか出ないかは、実態として、個人の好みに属する問題だろう。そもそも、私自身がサインする時には、そのどちらもその時の気分によって書くことがあるのだから。
ところで、「放す」を「話す」と書く小学4年生は多い。これは面白い。「放す」と「話す」というのは語源を共有するからだ*1。「話」というのはそもそも言いっ放しであり、大事な話というのはそれ自体矛盾した存在なのだ。

*1:離すも。