それは『路地へ』?

http://d.hatena.ne.jp/spongey/20070305に曰く、


このあいだ中上健次のビデオを見ていたら、健次の手書きの原稿がうつりました。

罫線いっぱいに、隣の列とくっつきそうに、びっしり並んでる。丸こくて、チャーミングな文字なんです。

その「中上健次のビデオ」って、もしかして、『路地へ 中上健次の残したフィルム』のことでしょうか。
路地へ中上健次の残したフィルム [DVD]

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それはともかくとして、「書き方用の文字は「お手本的」以外に特徴がなくて、誰の文字でもなく、どの歴史も感じられない、味気ない文字だ」というのはその通りだと思う。というか、個性がないというか自己主張しない書体を習得させるのが「ペン習字」とか「書き方」の目的ではないかしら。シニフィアンは目立ってはいけないのだ。
私も字の下手さでは人後に落ちない。少年時代には小説家になりたかったということもあったのだが、その頃石原慎太郎が凄い悪筆でその字を判読できる編集者が日本に数人しかいないという話を聞いて*1、それだったら俺も小説家になれるぞと思ったということもあった。
多分一般的にみんな字は下手になっているのだろう。これはみんなPCで書いているので、あまり手書きをしなくなったという以前の問題だと思う。横書きの普及。学校のレポートやビジネス文書以外の私的なメモ書きや手紙でも横書きをするようになって久しいが、実際に横書きをしてみると、漢字にせよ平仮名にせよ、そもそも横書きを想定してデザインされたものではないということが腕によって理解できる。というか、横書きだと、字をスタイリッシュに崩すことができないので、字がぎこちなくなる。と同時に、思考のリズムを乱してしまう。その思考への妨害度は、PCで書いていてちゃんと漢字変換が決まらない時とタメを張っている。

*1:たしか、筒井康隆がそう書いていたんだ。