内田樹「意地悪化する社会」http://www.nikkei.co.jp/kansai/elderly/37642.html
曰く、
先ず、かつて〈オウム真理教事件〉への応答として書かれた宮台真司氏の『終わりなき日常を生きろ』
最近『論座』が若年の貧困層の特集をしていた。その中で若いフリーターが「戦争待望」の心情を記していた。非正規雇用の身として「一方的にイジメ抜かれている私たち」にとって、戦争とは強者も弱者も分け隔てなく苦しめる点で究極の平等機会ではないのかというのである。「社会が平和の名の下に、私に対して弱者であることを強制しつづけ、私のささやかな幸せへの願望を嘲(あざ)笑いつづけるのだとしたら、そのとき私は『国民全員が苦しみ続ける平等』を望み、それを選択することに躊躇(ちゅうちょ)しないだろう」と彼は結論している(赤木智弘、「『丸山眞男』をひっぱたきたい」)。ここでは「戦争」という強い言葉が使われているが、これを「いじめ」と置き換えても意味は変わらない。「自分は被害者である」という前提から出発する人間が、「すべての人が被害者になる社会」においてフェアネスが実現されるという考えに同意するのはことの条理である。「いじめ」において子どもたちは決して「正義の味方」は到来しないという冷酷な現実を痛感した。子どもたちは「正義」という概念に唾を吐きかけ、自分自身を「邪悪なもの」に塗り替えることによって、「邪悪なもの」への恐怖を打ち消し、「全員が被害者で、かつ全員が加害者」というフェアネスを選んだ。
終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫)
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なお、祝祭としての災害ということだと、相米慎二の『台風クラブ』は必見。
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