承前*1
『毎日』の記事なり;
基本的には、以前に言及した『読売』の調査と同様な傾向か。
<いじめ世論調査>原因は「保護者のしつけに問題」が5割超毎日新聞が実施した全国世論調査(電話、今月25〜26日)で、いじめが行われる最大の原因を聞いたところ、教育制度や教師の指導よりもいじめる側の保護者のしつけに問題があると答えた人が5割を超えた。いじめをなくすために家庭・地域の役割を重視する回答も計6割を超え、学校の役割や教育改革に限界を感じているとみられる回答内容になった。
「いじめをなくすためには、どうしたらいいと思いますか」という質問には、「家庭での会話を増やす」(42%)▽「地域で子どもを育てる環境を作る」(22%)ことを挙げ、「教師の指導力を強化する」(10%)▽「少人数学級を導入する」(9%)は少数だ。
「教育制度」に問題と回答した人も、解決方法には家庭・地域(計63%)を挙げる回答が最も多く、保護者のしつけを原因に挙げた人は、計8割弱が解決方法を家庭・地域の改善に求めた。
また、「いじめた子に厳しい罰を与える」はわずか7%で、政府の教育再生会議が提言する見通しの生徒指導の厳格化の方向性に否定的な回答だった。
参院特別委で審議されている教育基本法改正案には、新たに家庭教育の項目が盛り込まれているが、いじめをなくすには63%が「役立たない」と答えた。「役立つ」と答えたのは23%で、安倍内閣を支持する人も54%は「役立たない」だった。【高山純二】
(毎日新聞) - 11月27日22時52分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061127-00000084-mai-soci
それに対しての突っ込み;
たしかにそうだと思う。ただ、この調査に関しては上のウェブの記事しか読んでいないけれど、紙の方にはさらに詳しい記事が載っているのかどうか。上の疑問に対しては、それ相応のクロス分析をすれば、或る程度は答えることができるだろう。この種の調査では、デモグラフィックな情報として、ジェンダーや年齢のほかにも、未婚/既婚の区別、家族構成を訊いている筈だと思うのだが、如何だろうか。ただし、「子どもがいじめの加害者だった親(自覚がある場合)、被害者だった(現在も含む)親」かどうかというのはセンシティヴな質問であり、いきなり電話で訊くのは難しいかと思う。メディアが行う調査について、さらに詳しい分析を公表するようにリクエストすることが可能かどうかはわからない。いちばんいいのは、以前も書いたように、誰でも自由に分析できるように、生データをExcelファイルで公開させるということだろう。
「いじめをなくすためには、どうしたらいいと思いますか」という質問の答えは、独身者やすでに子育てが終った人、子どもを持たない人と、乳飲み子や幼児を育てている親と、小学生の親、中学生の親、高校生大学生の親、成人した子どもの親、立場によって変わる。また、子どもがいじめの加害者だった親(自覚がある場合)、被害者だった(現在も含む)親でも違ってくる。
世代も家族構成も無視し、当事者性をも考慮せず調査対象を一からげにしても、そこから出てくる応えは「他人事」に対する客観視でしかない。これでは当事者であった可能性のある人にもまるで「他人事」である。当事者感覚がなければいけないとは思わない。むしろ、いじめの問題解決は、対処療法でない場合現在の当事者が絡まない方がうまくいくようにも思う。
http://d.hatena.ne.jp/aozora21/20061128/1164700098
ところで、一般的な「いじめ」=「いじめる側の保護者のしつけに問題がある」という知覚に対しての、
という事実の指摘は興味深い。
いじめは「親のしつけのせい」とはたしかにそうかもしれない。でも、正しいしつけ、良いしつけとはどういうものなのだろうか。卑近な意見ばかりで申し訳ないけれど、知り合いに、子どもをそれこそ可愛がり愛情たっぷりに育て親子仲もよく、親は子のために尽くし子もそれに応え、勉強もスポーツもよくできたお子さんである親子がいるが、三人息子のうちの真ん中のお子さんは酷いいじめっ子だった。そのお子さんが小学生の頃近所でさんざん下級生や同級生に嫌がらせをしていたのを、幼児だった長男を連れていた私もたびたび目にしていた。
すでに成人しているが、先日その知り合いが話の折にそのお子さんの小学校時代を振り返り、あちこちから苦情が来て謝って歩いた、中には「絶対に許さない」という親御さんもいた、と話していらした。なんでかね、あの子はいじめっこだった、と。
次男が小学校時代夜も昼も空けぬほど仲の良かった友だちが中学三年の現在いじめの当事者であるらしい(らしい、というのは次男がはっきり言わないからだ)すでに中学一年時に友だち関係は解消したようだけれど、当時次男はそのことをすごく辛がっていた。その子のご両親を多少知っているけれど、特に放任とも無関心とも思えない、私と同じような親御さんである。私と同じでは駄目かもしれないし、家庭内ではどうか知る由もないのだけれど。
家庭の中のことはほんとうに分からない。ロクに働きもせず、美しい躾とは無縁に見える人々のお子さんがいじめをやるとも限らない。