外国語を習う人たち

外国語を習う人というのはどれくらいいるのか。http://fukuma.way-nifty.com/fukumas_daily_record/2006/11/post_9797.htmlでは、NHKラジオ講座テキストの発行部数から推測している。


 英語       200万部以上*1
 中国語       14万部
 「ハングル」   10万部
 独逸語       10万部
 仏蘭西語 10万部
 西班牙語  9万部
 伊太利語 9万部
 露西亜語 4万部


たしかに、これから見ると、英語の1人勝ちである。勿論、TVの講座もあるし、実際に学校へ行っている人もいるだろうから、実際に学習している人はこの数倍は少なくともいるわけだ。それでも、英語(正確に言えば米語)の優位は変わらない。ここから、例えば「国際化と言われつつも実はアメリカ化に過ぎないのがこの国の実情なのかも知れない」とか色々なことはいえると思う。たしかに、それはエコロジカルな意味で大変な問題ではある。それよりも不思議なのは、日本全国の数百万人の、受験生でもない大人がラヂオで英語(米語)を勉強しているという事実だ。不思議ではありませんか。中学と高校の6年間、それから大学でも英語の授業はある。日常的に読書をしたり、新聞を読んだりしていれば、リーディング・スキルを身に着けることはできるだろうし、映画のDVDでも観ていれば、ヒアリング力もつく。映画を観たり小説を読んだりすれば、会話の仕方だって覚えられる。それなのに、わざわざ?という感じはするのだ。それから、英語を巡っての不思議なのだが、電車の中で洋書を読んでいる人というのは少なくとも東京ではけっこういる。そういう人たちが読んでいる多くは、ベストセラー小説であって、どれも日本語訳が出ている。私が思うには、翻訳が出ているものをわざわざ苦労して原文で読むというのはどういうことなのかということである。翻訳が酷いからなのか。しかし、日本のプロの翻訳家がそれほど酷い仕事をしているとは思えない(学者が訳しているならともかく)。翻訳はあってもやはり原文を味わってみたい? しかし、その多くはシニフィアンそれ自体のメッセージ性が高い純文学、或いは詩文ではない。ただのエンターテイメント小説である。エンターテイメント小説で原文に拘るとしたら、研究者などのプロフェッショナルな読者だろう。しかし、私が電車の中で見たのは、ごくふつうのビジネス・ピープルである。これはずっと謎なのである。

おまけ:http://fukuma.way-nifty.com/fukumas_daily_record/2006/11/post_9797.htmlからリンクされていた、今年6月の『毎日』の記事。「韓流ブーム」翳り?


ハングル熱、冷めた? 受講者数頭打ち、テキスト売れず


 全国の大学で韓国・朝鮮語を学ぶ学生数が頭打ちになってきた。NHK教育テレビ「ハングル講座」のテキストの売れ行きも下降線。韓国の人気スターを追いかけるおばさまたちは相変わらず熱を上げているものの、大学関係者らは、韓流ブームに乗ったハングル学習熱は冷めたと分析する。その一方で、良質の指導者育成を目指す動きも始まっている。【鈴木琢磨

 「明らかにピークは過ぎましたね」。そう語るのは韓国・朝鮮語教育の実態を調査している財団法人・国際文化フォーラム(東京都新宿区)の小栗章さん。例えば同志社大の新入生の受講者は約560人、前年から約100人減った。「03年以降、毎年5割ずつ増え、クラスも増設してきましたが……」(油谷幸利・同志社大言語文化教育研究センター教授)。早稲田大では新年度の全学年の受講者は約1800人、同じく右肩上がりだったのが初めて横ばいになった。

 もともと受講者数の少ない東大でも似たような現象が起きている。新入生で選択した学生は04年度が104人、05年度は85人、今年度は70人にまで減った。「韓流ブームであまりにも言語がメジャーになりすぎ、学生は好奇心を失い、敬遠したのかもしれませんね」と生越直樹・東大大学院総合文化研究科教授は話す。

 一方、「冬のソナタ」で韓流ブームに火をつけたNHK。教育テレビ「ハングル講座」のテキスト4月号は、04年は増刷分を加え20万部発行。それでも書店で品切れが相次いだ。05年もほぼ同部数発行したが、年間を通じての実売部数はかなり減ったとされ、今年は15万〜16万部にまで落ち込んでいるとみられる。

 NHKの伊藤尚伸チーフプロデューサーは部数減を認めたうえで、こう言う。「残念ですが、ヨーロッパ言語も軒並み漸減傾向にある中、このくらいの数字ならまずまずですよ。ワールドカップの影響でドイツ語は好調ですが、その5倍も売れているわけでね。視聴者のニーズは多様化してきて、英語のように複数の番組づくりを検討しなければと考えています」

 大型書店に行けば、韓国・朝鮮語のテキストは中国語に劣らぬスペースで並ぶ。韓流映画で学ぶ韓国語といったカジュアルなスタイルが目につき、本格的入門書や中・上級者向け教材はほとんどない。教授法を習得しないまま、我流で教える教員も多い。大阪大大学院言語文化研究科の植田晃次助教授は現状を憂えている。

 「学習者は増えましたが、良質の教師が足りません。無資格医師の民間療法的なものが許容されています。また実用語学のみ重視され、買い物会話程度で日韓友好ができたかに錯覚されがちですが、文化の理解が深化しているのではありません。外国語学習の目的は他者への同化ではなく、自己を自覚し、他者を理解することですから」

 今月1日から、冒頭の国際文化フォーラムを会場に、韓国・朝鮮語教師のスキルアップの講座が始まった。学習者の減少が質の向上につながるきっかけになるかどうか、試練の時でもある。<え・平山義孝>

毎日新聞 2006年6月12日 東京夕刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/tokusyu/shiritai/archive/news/2006/06/20060612dde001040047000c.html

*1:複数のテキスト。