不一定『期過聖誕』

承前*1

これも前に買ったもの。やっと封を切って、プレイヤーにかけてみる。
先ず、このディスクには曲名はない。全8曲計60.31分だが、たんに曲目番号と演奏時間が書かれているのみ。アルバム・タイトルの『期過聖誕』は、これが2001年12月24、25日広東省深zhenにおけるライヴ録音であることに因むか。
メンバーは、


 ギター:隆龍
 トランペット:文智涌
 キーボード:張荐
 ベース:陳小虎
 パーカッション/ドラムズ:張荐、岳浩昆、竇唯


音楽の感じは、文智涌のトランペットが目立っているということもあるが、ジャズ/フュージョン。竇唯はドラマーに徹していて、いいビートを刻んでいる。但し、4曲目は隆龍のメタリックなギターが全面的にフィーチャーされたハード・ロック風。それに絡むトランペットもなかなかの味。

Old architecture is a very good way to make new money.

先ずは『朝日』の記事;


上海の歴史的洋館、相次ぎリニューアル おしゃれに再生


 19世紀後半から20世紀初頭にかけて多数の外国人が暮らした上海で、当時建てられた荘厳なビルや洋館のリニューアルが進んでいる。1949年の新中国成立後は事務所や住宅に使われてきたが、老朽化が進み、高層ビルなどの建築ラッシュで取り壊されるケースも少なくない。地元政府は貴重な文化遺産とみて保護に乗り出すとともに、おしゃれなショッピング街や高級住宅街に再生させる意向だ。

 長江(揚子江)の支流、黄浦江に沿って旧租界時代の趣を残す外灘(ワイタン)(バンド)。25棟あるビルの大半は英国人らが1920〜30年代ごろに造り、アジア有数の金融・ビジネス街として栄えたものだ。西欧の各時代の建築様式で建てられ、「世界の建築博覧会」と言われるほど。このうち五つのビルが今、次々と高級レストランや有名ブランド品店などが入ったショッピングビルへ再生されつつある。

 04年末にショッピングビル「外灘18号」として生まれ変わった旧英国チャータード銀行ビル。貿易会社などの事務所として使われてきたが、ブランド品店が10店舗、フランス料理店やバーも入り、1日1000人が訪れる人気スポットに変わった。

 香港の投資会社が市側と20年の賃貸契約を結び、工期2年、1400万ドル(約16億円)をかけて改修した。当時の設計図に基づきイタリア人の建築家が設計し、イタリアの博物館員に監修を頼んで大理石の柱や窓枠の模様まで再現した。

 同ビルの李永年マーケティング部長は「ターゲットは中国人の富裕層。投資額は7年で回収できる」と自信たっぷりだ。

 プラタナスの街路樹に囲まれ、緑豊かな市中心部の思南路。旧フランス租界の一角には、約100戸の赤い屋根の一戸建ての洋館が並ぶ。戦前にフランス人や中国の資産家が暮らした家だ。新中国成立後は一般市民が暮らしてきたが、老朽化が激しく、昨年から住人を立ち退かせたうえで改修工事を始めている。

 一角は市が定めた歴史的建物の保護地区にあたり、多くの洋館が保護建物に指定された。洋館の原状回復を前提とした市で初めての再開発で、市は高級住宅街として売り出す計画だ。市都市計画管理局は「歴史のある洋館は大切な市の資源。改修費は新築よりもかかるが、洋館を守るためです」と言う。

 一方、急ピッチな市場経済化と再開発により、趣のあるビルや洋館が取り壊され、外観や内装を現代風に作り替えるなどの乱開発も進む。

 危機感を持った同済大学の阮儀三・教授(71)らが保護強化を訴え、市は03年、全国で初めて歴史文化景観地区と歴史建築保護条例を新設。12の保護区を設置し、道路拡張や工場新設などを禁じた。計632カ所、2138棟の洋館やビルを保護建物に指定し、使用者に保護を義務づけた。

 さらに外部の建築家らによる専門委員会をつくり、改装に目を光らせる。市は洋館一軒ごとに建築年代や当時の所有者などを特定するカルテづくりにも乗り出した。委員会の副委員長も務める阮教授は「これまで開発第一、保護は二の次だったが、両立させたい」と話す。

(08/22)
http://www.asahi.com/world/china/news/TKY200608220075.html

古い建物をリノヴェイトして、それを”a very good way to make new money”とするというのは、2002年の「新天地」に始まったかと思う。その後の蘇州河河岸、泰康路、莫干山路の再開発もこのコンセプトに基づいている。


  Christine HUANG, Glori YE “Next-tiandi?” SHAugust 18 2006, pp.6-9


は、建築評論家Paul Goldbergerが「新天地」を評した言葉”Old architecture is a very good way to make new money.”を引きながら、静安区の1995年に操業停止した工場をリノヴェイトする「同楽坊」プロジェクトを紹介する。
これは泰康路や莫干山路と同様に、産業資本主義(社会主義)の遺産を消費社会向きにリノヴェイトするというプロジェクトなのだが、『朝日』の記事で取り上げられている外灘や仏蘭西租界の場合は、イデオロギー的な事情がさらに複雑だろう。何しろ、それらは〈帝国主義〉の遺産だからだ。というか、Old Shanghaiとしてノスタルジーを込めて回想され、また上海のウリにもなっているものにはどれも〈帝国主義〉の明らかな痕跡が刻まれている。

『竇唯譯雨吁』

承前*1

やっと『竇唯譯雨吁』の封を切り、実際に聴いてみる。
それで、これが竇唯+「譯」というバンドのCDであること、レコーディングされたのが2000年の7月であり、ポストプロダクションは2006年7月。つまり、〈車燃やし事件〉の後である。
メンバーは、


 〓*2謳歌:ギター
 陳勁:ベース
 單曉帆:ドラムス及びパーカッション
 竇唯:ギター、ヴォイス、キーボード、ドラムス


である。作詞作曲は竇唯。編曲は「譯」。
曲目は、


静安

禧晤
乱戦国
語虚何以言知
雨吁
天水
山秀谷
鄭公
喜調
乂安
尾声再 
シンセサイザーを前面にフィーチャーしたアンビエント風から始まって、徐々にギターを前面に出したパンク風に曲調が移っていく。しかし、音の透明さは失われない。聴いていて、懐かしい感じがしたが、この音の感じはかつて竇唯がつくりだした王菲の音のあの透明さと同じなのだ。

鄭在東「行楽須及春」

台北生まれで上海在住のアーティスト鄭在東の個展「行楽須及春(Pursue Pleasure While Catching Spring)」(滬申画廊)*1、最終日にやっと観ることができた。
楊聖捷「鄭在東:禅宗與嬉皮」(『外灘画報』2006年8月10日号、C10)によると、台北に生まれた鄭在東は、父親が60歳の時に生まれた子どもなので、早くに親を亡くした。大学では映画を専攻し、ビートニクやヒッピー思想にはまった。さらに、「生命的答案」を求めて、禅宗に傾倒する。1998年、45歳のときに単身台湾から上海に移住。創作と「游山玩水」の傍ら、骨董品のコレクションを続ける。
ギャラリーでは、作品のほかに鄭在東がコレクションした骨董もディスプレイされ、〈文人の書斎〉風の雰囲気を醸し出している。青を基調として、主に禅の公案に題材を採った作品は不思議な(例えばマグリットの絵に感じるような)静謐感がある。それは青という基調色の効果だけでなく、(皮肉なことかもしれないが)東洋美術一般を特徴付ける印象主義的/表現主義的なタッチ(それは絵にダイナミズムを与えるのだが)が思い切り抑制されているためだと思った。
作品のうちの幾つかはhttp://www.shanghaigalleryofart.com/en/artists_detail.asp?id=39をご覧いただきたい。

和平官邸

土曜日、汾陽路158号の「和平官邸」*1で食事。先週も一緒に食事をしたM弁護士とその同僚のZ弁護士、それから編集者のZ嬢と友人のKさんと私たち夫婦。
「和平官邸」は国民党幹部であった戴笠の邸宅で、革命後は「林彪の息子、林立果」が住んでいたこともある*2。料理は基本的には上海料理なのだけれど、上海料理特有のしつこいくらいの甘さは目立たない。特筆すべきは、フォアグラのウィスキー煮、178元。これは煮汁も湯呑みに注いで、いただく。値段も心配したほどのことはなく、1人あたり100元ちょっと(赤ワイン1本込み)。但し、個室の場合はミニマム・チャージが1人あたり200元*3
食後、歩いて数分の、これもまた洋館をリノヴェイトした独逸風ビア・ホール「上海寶莱納餐庁(Paulaner Bauhaus)」*4へ。自家醸造麦酒を呑む。ここでは、80年代のヒット曲ばかり演奏するハウス・バンドがいて、西洋人も中国人も盛り上がっているが、静かに呑みたい向きにはうるさいかもしれない。NAさんも合流。私たち夫婦とKさんを除いて、みんな早稲田の卒業生だということに気付く。日本人中国人を含めて、全員上海人ではないのだが、上海人というのは帝国主義、国民党、共産党、最近では多国籍企業と、常に外部の強い者との関係で自らのアイデンティティを確保してきた云々という話になった。
ところで、「和平官邸」のある汾陽路と岳陽路の交差点にはプーシキン銅像(胸像)あり。1937年に最初に建てられたということだが、その謂われを知らず。

「閉ざされた町」

http://www.asahi.com/national/update/0826/OSK200608260023.htmlのニュースを読んで、カルメン・マキ&OZの「閉ざされた町」を聴く。

閉ざされた町

閉ざされた町

「学校」と世界がぴったりと一致してしまった。世界への〈隙間〉を見出せなかったということか。

とぎれとぎれに吹き鳴らす
誰かの草笛今日も聞きながら
私はいつも思い続けてた
この町の色をいつか変えようと
そんな思いで満ちた町が
輝きだしたよ鏡の色に
(作詞:加治木剛)

図書館の裏

東京都教育委員会というと、バカウヨの巣窟という印象が強いわけだが、最初にこの話をMixiのニュースで読んだときは、東京都教育委員会もなかなかいいこと考えるじゃないかと思った。しかし、実際にはそんなわけではなさそうだ。『日経』と『赤旗』の記事;


124万冊所蔵の全国最大雑誌文庫、東京・立川に設置へ
 東京都教育委員会は25日までに、都立多摩図書館立川市)に一般雑誌から学術雑誌まで幅広い雑誌を集めた「東京マガジンバンク(仮称)」を設けることを決めた。全国最大規模の約1万6000種類、約124万冊を所蔵し、2009年度のオープンを目指す。

 都教委によると、雑誌図書館として知られる「大宅壮一文庫」(世田谷区)をしのぐ規模となり、公立図書館としては全国的にも珍しいという。

 「マガジンバンク」は都立中央図書館(港区)などに所蔵された雑誌のバックナンバーを集約。現在刊行されている雑誌約6000種類もそろえ、閲覧と有料コピーの提供を予定している。

 都教委は「雑誌は情報量、信頼性などでバランスのとれたメディア。雑誌の有用性に着目してサービスの拡充を図りたい」としている。〔共同〕 (22:00)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20060825AT1G2403Q25082006.html


図書館の新リストラ方針
都教育委 有料サービス導入

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 東京都教育委員会は二十四日、都立図書館の新たなリストラ方針を盛り込んだ「都立図書館改革の具体的方策」を策定しました。二〇〇二年の第一次リストラ計画に続くもので、有料サービスを導入、貸し出しサービスの縮小などの方針を打ち出し、関係者から心配する声があがっています。

 新方針は、都立三館を中央・多摩の二館に縮小します。年間七十万人が利用している日比谷図書館は廃止し、千代田区に移管しますが、同区と合意ができず、当初の二〇〇八年度移管は延期する見通しです。

 中央館は、各階に配置している司書を一階に集約。多摩館に「東京マガジンバンク」を開設し、雑誌の収集点数を増やすものの、中央館で所蔵する雑誌の四割余を多摩館に移し、縮小します。

 資料の保存年限を「原則として百年」とし、発行後三十年経過した資料の一部や、複数所蔵する資料は一点を残し除籍(廃棄)します。

 区市町村立図書館を通じて都立図書館の資料を貸し出すサービスは、利用者の持ち帰りを禁止します。インターネットを利用した一部の情報サービスを有料化します。

 市立図書館長などから「有料サービスの導入は、無料原則を定めた図書館法の精神に反する。利用者間に情報格差をつくる」「日比谷図書館は都民の財産だ。区移管はやめるべきだ」と批判の声があがっています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-08-25/2006082514_03_0.html