#平成 になったばかりの頃の #関千枝子 さんの文章。「やっぱり日本は豊かでなかった」。 pic.twitter.com/SOBiuCzaUV
— SUMITA MIKIO (@MikioSumita) 2021年3月9日
片づけをしていたら、先日他界した関千枝子さん*1が1989年3月に発表した文章が見つかった;
「やっぱり日本は豊かでなかった――”豊か”幻想の裂け目に見た現代の貧困の数々」『出版ダイジェスト』1284
この文章は著書『この国は恐ろしい国―もう一つの老後』(農山漁村文化協会)に対する反響について書いたもの。
これは21世紀の話ではなく、昭和天皇が死んで元号が平成に代わった頃の話である。後にバブルと呼ばれた好景気は揺るがないものと思われており、メディアでは連日、昭和天皇と昭和の回顧のほか、リクルート事件の追及が報道されていた。「利狂人」*2、つまり「豊か」の病理として。
マスコミの報道はいま、豊か豊かと”金あまり”ばかりが報道されている。豊かでないのは”心”だけで、貧乏はもはや日本にないかのようだ。しかし、その裏側で、生活保護の申請拒否、無理やり辞退届を出させての保護切り捨て、国民健康保険の保険が払えなくて、保険証のとりあげというケースが続出しているのである。残念ながら、こうしたことが一般に報道されるのは稀である。生保の文字が一般紙に載るのは”不正受給”のときだけ、の観がある。
また、
暉峻淑子『豊かさとは何か』が岩波新書から出たのはこの半年後くらい。ただ、ここで問題にされているのは古典的な「貧困」ではない。「豊か」になっている筈なのにそれを実感できないのは何故なのかという問題。
(前略)九州の読者で怒って来られた方がある。「子三人抱えた母子家庭で、児童扶養手当をいれて月収二十万円しかない」と書いたことに対し、「二十万円の給料をとっている男は、自分の町には何人もいない。二十万円しかとは何か」という、お叱りの手紙だった。この方も私も思いは一つだと思うのだけども、日本には貧乏人がたくさんいるのだ。豊か幻想に踊らされているだけなのだ。
- 作者:暉峻 淑子
- 発売日: 1989/09/20
- メディア: 新書
*1:See https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/03/02/081518
*2:この宛て字を考えたのはたしか高野猛氏。