宮尾登美子

作家の宮尾登美子さん*1が昨年末に亡くなっていた。享年88歳。
NHKの報道;


作家の宮尾登美子さん死去
1月7日 15時27分


映画やテレビドラマの原作にもなった「櫂」や「天璋院篤姫」など、女性を主人公にした小説を数多く発表した作家で、文化功労者宮尾登美子さんが、先月30日、老衰のため亡くなりました。
88歳でした。

宮尾さんは大正15年に高知市で生まれ、保育所などで働きながら文学を志し、ラジオドラマの脚本が入選したのをきっかけに文筆活動を始めました。
昭和37年に発表した小説「連」で婦人公論の女流新人賞を受賞して注目され、みずからの生い立ちを描いた「櫂」で太宰治賞を受賞したほか、昭和54には高知の一絃琴の演奏家をモデルにした「一絃の琴」で直木賞を受賞しました。
宮尾さんは、このほかにも「陽暉楼」、「鬼龍院花子の生涯」といった故郷の高知を舞台にたくましく生きる女性たちを描いた作品などを次々に発表し、数多くの作品が映画やテレビドラマになりました。
NHKでも「藏」や「櫂」など多くの作品がドラマ化され、「宮尾本『平家物語』」は平成17年の大河ドラマ義経」の原作となったほか、平成20年の大河ドラマ篤姫」も宮尾さんの「天璋院篤姫」が原作です。
宮尾さんが描いた波乱の人生を強く生きる女性たちの姿は、自分の姿を重ね合わせるなどした多くの人の共感を呼びました。
宮尾さんは、平成21年には文化功労者に選ばれたほか、平成12年にはNHK放送文化賞も受賞しています。


「巨星墜つという感じで残念」

宮尾さんとの交流が深く、大ファンだという作家の林真理子さんは「宮尾さんの作品を取り上げる雑誌の連載企画があり、去年の夏から取材を始め、ことしも打ち合わせをする予定だった。宮尾さんとは、32年前のNHK紅白歌合戦で審査員としてご一緒したのが最初の出会いで、そのとき、宮尾さんが出演者と同じ紫色の服を着てきたため、気を遣って別の服に着替えていたことを今も鮮明に覚えている。非常に流麗な文章で、女性として宮尾さんの作品を読むと全身に染み渡るような快感があった。熱心な読者として本当にかわいがってもらい、服をもらったり、食事をごちそうになったりした。平安時代からの女性文学の系譜を引きついだ華やかな女流作家で、亡くなられたことは出版業界が不況にあるなか、巨星墜つという感じで非常に残念だ。もっともっと作品を書いてほしいというつらい気持ちだが、心からご冥福をお祈りしたい」と話していました。


「もっと女性の情念描いてほしかった」

宮尾さんの原作を基にした映画「藏」と「寒椿」で監督を務めた降旗康男さんは「宮尾さんは女の人の『男には負けない』という情念を描く魅力的な作家で、主人公はいつも魅力的でした。『藏』を制作した際は、音楽をさだまさしさんが作曲してくれたことを宮尾さんがとても喜んでいたことを覚えています。また、「寒椿」を製作した際は、生き生きとした高知弁が作中に多く、監督としてそれをいかに生かすか努力しました。亡くなられたと聞いて驚いています。もっと女性の情念を描いてほしかった」とコメントしています。


「寂しい気持ちでいっぱい」

宮尾さんの代表作「陽暉楼」のモデルになった高知市にある料亭、「得月楼」の松岡英雄社長は「宮尾さんが亡くなって寂しい気持ちでいっぱいです。宮尾さんは高知県に帰ってくるたびに、うちで食事をしていたが、2年ぐらい前に食事に訪れたのが最後でした。『陽暉楼』の執筆にあたって料亭内の14畳の座敷で、宮尾

さんが戦前の得月楼を訪れた客などに熱心に取材していた様子がとても懐かしいです」と話していました。
山本一力さん「憧れの人」

宮尾さんと親交のあった同じ高知市の出身で、直木賞作家の山本一力さんは「初対面のとき、宮尾さんは『あんたは私の弟分や』と言ってくれ、ことばを気負わずに言える大きな人でした。宮尾さんの新しい作品が、もう一行も読めなくなると思うと命の重さを感じます。物事を真正面から捉えて逃げない人で、土佐の女性の強さを持ち、土佐弁をずっとしゃべっておられる憧れの人でした。東京に出てこられて、不遇の時代もありましたが、生き方そのものが、作品の背骨になっていると感じます。宮尾さんの残した作品を、もう一度読んで、一行一行に宮尾さんが込めた思いを感じたい」と話していました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150107/k10014508751000.html

実をいえば、宮尾さんというのは、俺にとって、あの山崎豊子と同様に、活字を通しては知らず、ただ映像を通して知っていたにすぎない作家だったのだ(汗)*2。最近だと、宮崎あおいが主演したNHK大河ドラマの『篤姫*3。また、勿論仲代達矢夏目雅子主演の『鬼龍院花子の生涯』に、緒形拳池上季実子主演の『陽暉楼』という五社英雄の作品。徹底的な悲惨と絢爛豪華さを合わせ持った(或る意味では)最も映画に相応しい世界はもう生まれないのだな、と感慨に耽る。
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