印度の「マクド」



bluenote1969


マクドナルドの略称は、関東では「マック」、関西では「マクド」であると認識しているのですが、これは関西の人は無母音化が難しく、語尾の「ク」を発音しにくいからなのかも知れません。「松阪」「松茸」も、関西では「まっさか」「まったけ」と発音する人がほとんどです。

それはともかくとして、「略称」としては「マック」よりも「マクド」の方が優れているのと思うので、東京人も「マクド」と言うべし! と思っています*1
唐突に、石井遊佳百年泥』から引用。印度チェンナイのIT企業「ヒンドゥー・テクノロジーズ」社内の日本語教室にて。

(前略)ヴィシュヌがにこやかに、
「せんせい! あにはせんげつ、かわさき*2いきました、いまはたらきます」
しごくむぞうさに話題転換、現在ヒンドゥー・テクノロジーズよりさらに高い国際的評価を得るらしい、CMMIレベル5の超有名IT企業バンガロールブリリアント・テクノロジーズの優秀な社員という彼の長兄が、差年前から神奈川で働いている話はそれまでに幾度か聞いていた。なんでも工学部を首席で卒業したゴールドメダリストらしく、お台場のガンダム前で子どものバギーを押す奥さんと三人で笑っている写真も前日見せてもらったばかりだ。その自慢の兄が先月川崎駅前のマクドナルドで働き始めたと、一家の出世頭である長兄の後に続くべくなにやら昨今授業にたいする目の輝きが違ってきたヴィシュヌが、精いっぱい日本語だけで説明しはじめたがまったく辻褄があわず、
マクド? お兄さんが、川崎のマクドで働いています? なぜですか?」
私が訊き返したところ、「マクド?」周囲がぽかんとした顔になったため、
「日本でマクドナルドは〈マクド〉といいます、はいみなさん大きい声で、マクド
勢いとはいえいささか公正さを欠いた単語導入(後略)(pp.66-67)
落ちは、「〈兄〉と〈義姉〉の言い間違え」。「あっ! 〈あに〉ありません。〈あね〉! 〈あね〉です。あにのおくさんですせんせい」(p.67)。
百年泥 (新潮文庫)

百年泥 (新潮文庫)

石井さんは大阪府枚方市生まれですね。

*1:林檎のPCは「マック」じゃなくてマッキンね!

*2:原文は傍点。