井出孫六

信濃毎日新聞』の記事;


井出孫六さん死去 89歳


 南佐久郡臼田町(現佐久市)出身の直木賞作家で、本紙夕刊1面のコラム「今日の視角」の筆者も務めた井出孫六(いで・まごろく)氏*1が8日午前5時12分、敗血症のため、東京都府中市の病院で死去した。89歳。自宅は府中市武蔵台。近く家族葬を行い、後日お別れの会を開く予定。喪主は妻信子(のぶこ)さん。

 中央公論社の編集者を経て、1969(昭和44)年に執筆活動を本格化。松代藩(現長野市)出身の画家、川上冬崖(とうがい)の死を題材にした歴史小説「アトラス伝説」で75年に直木賞、長編ルポルタージュ「終わりなき旅『中国残留孤児』の歴史と現在」で86年に大仏次郎賞を受賞した。2013年には第20回信毎賞を受けた。

 豊富な資料を基にした小説やルポルタージュ、評論、エッセーで知られ、信州ゆかりの人物を取り上げた作品も多い。代表作はほかに、野口英世の生涯を追った「非英雄伝」、秩父事件が題材の「秩父困民党群像」、戦前に軍部批判を続けた本紙主筆を取り上げた「抵抗の新聞人桐生悠々」など。

 県内在住の元中国残留孤児と遺族が、国が早期に帰国措置を取らなかったなどとして国に対し損害賠償を求めて長野地裁に提訴した訴訟では、証人として、移民の実態や、戦後帰還政策が遅れた経緯を証言した。

 79年1月から15年3月まで36年余にわたり筆者を務めた「今日の視角」は1800回に及び、時々の政治・外交・社会問題のほか、戦争と平和、民主主義についての考察、故郷への思いなどをつづった。

 旧臼田町の造り酒屋に生まれ、東京大仏文科を卒業後、都内の中学、高校で英語教師もしていた。三木内閣で官房長官を務めた故井出一太郎氏、医学者で千葉大学長だった故井出源四郎氏は兄、評論家の故丸岡秀子氏は姉。元厚相の故井出正一氏はおい、長野3区選出の衆院議員井出庸生氏はおいの子に当たる。

(10月9日)
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20201009/KT201009ASI000002000.php

終わりなき旅―「中国残留孤児」の歴史と現在

終わりなき旅―「中国残留孤児」の歴史と現在

  • 作者:孫六, 井出
  • 発売日: 1986/01/22
  • メディア: ペーパーバック
井出氏は秩父事件関係の本を何冊も書いているのだけど、遺憾ながら未読。秩父と佐久地方は一続きであり、秩父事件も佐久地方に波及しているのだった*2