回帰、クライマックスに

ピスタチオ (ちくま文庫)

ピスタチオ (ちくま文庫)

先日、梨木香歩さんの『ピスタチオ』の冒頭で主人公の名前の由来として、英国の画家、ウィリアム・ターナーが言及されていることに触れ、小説の「後半まで読み進めて、まだ「ターナー」的な風景を感じたことはない」と書いた*1。しかし、「ターナー」は突然回帰してきた。小説のクライマックスで。「ターナー」とともに物語の勢いは一気に加速され、そのまま数十頁を一気に読んで、読了してしまった。「ターナー」が回帰してくる頁数を記すと、p.292。
小説の最後の方に、〈小説内小説〉として「ピスタチオ――死者の眠りのために」という短篇が唐突に挿入されるのだけど(p.300ff.)、この〈小説内小説〉があるために、『ピスタチオ』という小説は(ベタな話で恐縮だけど)小川洋子さんの『ことり』と共鳴し合っていると勝手に思い込んでしまった。

ことり (朝日文庫)

ことり (朝日文庫)

  • 作者:小川洋子
  • 発売日: 2016/01/07
  • メディア: 文庫