書店の策

櫻田弘文「創業100年 甲府「25坪の書店」が生き残れるワケ」https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190217-00000006-mai-bus_all *1


山梨県甲府市の「春光堂書店」4代目社長の宮川大輔氏の策を巡って。


全国の書店経営が厳しい状況にある中、春光堂書店は売り上げを維持している。そんな同店の特徴が、棚の編集の仕方だ。本のラインアップと構成の仕方が独特なのだ。従来は本の種類や判型、ジャンルごとに並べていたが、「暮らしに発見の種を」をコンセプトに「感じる」「考える」「つくる」といったテーマごとに本をそろえている。カルチャーや暮らし関連の売れ行きが好調だ。

 宮川さんは、「私が厳選したものだけを並べることで個性が際立ちました」という。それをブログで紹介する人や「移住のきっかけにしました」という人が現れ、宮川さんは小さな本屋の可能性を感じられるようになった。


宮川さんは、人と本をつなぐ「やまなし知会(ちえ)の輪会」を12年に始めた。地元で活躍する経営者や大学教授、新聞記者、行政マンなど100人ほどが会員で、「本当に薦めたい本」をコメント付きで店頭に並べている。本を通じて地元の人の輪が広がっていく機会になっているという。
「ブックガーデン」について;

きっかけは本の配達先の歯科医院だった。待合室の本のラインアップがばらばらで、さらに雑然としていたのが気になり、院長に「医院のイメージに合う本をセレクトさせてほしい」と持ちかけた。これが口コミで広がって、ホテルや旅館、企業が福利厚生の一環として設けた書籍コーナーなどでコーディネートを任されるようになり、ビジネスの一つの柱になっている。

地道な活動は他にもある。人が本と出合う場づくりとして続けているのが読書会だ。地元の公務員や会社員、主婦や学生などさまざまな立場の人が幹事となり、持ち回りで課題図書を決め、毎月第1金曜日に春光堂書店で行う。すでに130回以上を数え、毎回10人超が集まる。年に1度は店前のアーケードで「まちなか読書会」を開催する。

 13年には、地元のフードプランナー、ワインアドバイザーとともに「シーンを味わう」というイベントを始めた。毎回、宮川さんが選ぶ1冊の本を題材に、物語に合うディナーとワインを提供する朗読会だ。「星の王子さま」を選書した回では、フランスの地方料理を作った。1人1万5000円で参加でき、毎回20人の定員がほぼ埋まるという。

図書館と本屋との関係;

図書館との連携という独特の取り組みにも挑戦している。15年に宮川さんのもとに山梨県立図書館から「図書館の利用方法を一緒に考えてほしい」と声がかかった。宮川さんは、「図書館と書店は一見するとライバルのようですが、両者にそれぞれいいところがあります」と語る。

 図書館の利用方法という課題を解決するための議論やワークショップを重ねる中、図書館と書店が共同で取り組むイベントが16年に生まれた。やまなし読書活動促進事業の一環として、県立図書館と参加書店を利用者が巡るスタンプラリー「やま読ラリー」だ。

 利用者は図書館と各書店が一つのテーマに沿って独自にセレクトした本を楽しむ。16年は18書店(28店舗)の参加だったが、18年は29書店(37店舗)に広がり、市町村の図書館や学校も参加するようになっている。本を図書館で借りたり、参加書店で購入したりするとカードにスタンプが押される。スタンプが四つたまると、山梨ゆかりの作家や学者のメッセージが入ったしおりやブックカバーと交換できる。