承前*1
西岡千史*2「ヤラセ否定の日テレ「イッテQ」に残る2つの疑惑を直撃 詳細は答えず、過去は打ち切りも」https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181108-00000088-sasahi-soci&p=1
NTVの『世界の果てまでイッテQ!』 問題についての『AERA』の記事。まあ日付が早い分だけ、目新しいことは書いていない。ただ、2007年の関西テレビ『発掘! あるある大事典II』の捏造疑惑*3を最初に追及したのは『週刊朝日』だったのか。
さて、『ホウドウキョク』の報道;
例えば、「橋祭り」があると信じてラオスに旅行したのに現地でそんなものはないということを知った観光客がラオス政府(「情報文化観光省」)に、飛行機代とホテル代を返せ! とクレームをつけてくるようなことがあったらどうするのかということもある。
イッテQ“波紋”政府が対応協議 「日本人は誠実な人たちと...」
11/9(金) 16:18配信 ホウドウキョク
日本テレビのバラエティー番組で、「ラオスの祭り」として紹介したイベントに、「やらせ」の疑いがあると週刊誌が報じた問題で、ラオス政府が、今後の対応を協議していることがわかった。
ラオス情報文化観光省の関係者は、FNNの取材に対し、日本テレビのバラエティー番組で、「橋祭り」と紹介されたイベントについて、「ラオスの祭りでも文化でもない」と強く否定した。
撮影の認可作業に関わったこの人物は、「『祭り』を紹介する企画だと、事前に知っていたら許可は出さなかった。なぜなら、このイベントは、本当の祭りではないからだ」と話している。
また、「日本人は、誠実な人たちだと思っていた。今後は、もっと申請を精査する必要がある」と述べ、政府内で対応を協議していることを明らかにした。
日本テレビは、「番組サイドでイベントを企画したり、セットなどを設置した事実はなく、番組から、賞金を渡した事実もない」と説明しているが、現地で、コーディネーションを行った会社の代表は、「自転車で橋を渡るイベントを提案し、セットを組んだ。参加者は、自分の会社で集め、賞金も支払った」と話している。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181109-00038627-houdouk-soci
『デイリースポーツ』の記事;
たしかに『川口浩探検隊』*4を本気で信じていた人は老若男女を問わず(私の知っている限り)いなかった。勿論、明らかに腕時計をした跡がある〈原始人〉とか、あれだけの大発見を連発しているのに学会発表もしないとか、俺のことを信じるな的なメッセージは処々に隠されていたわけだけど*5。しかし、『川口浩探検隊』を視る快楽というのはかなりシニカルなもので、それは例えば「探検隊」の偉業を素朴に信じる〈情弱〉*6を脳内で構築してそれを冷笑するということも含まれていた。そのシニシズムを突き詰めれば、私たちが素朴に信憑している世界(とそれについての知識)というのは〈マスゴミ〉*7によって捏造された幻想にすぎないという虚無主義に行きつくかもしれない。私たちはそのようなシニカルな世界に耐えられるのだろうか。「報道番組ではない」からいいと尾木ママは言うけれど、それだと、ヴァラエティ番組を鵜呑みにして被害を被った人はリテラシーの低い情弱なので自己責任を甘受せよということになるのだろうか。川口浩に唆されてジャングルに赴く奴は(多分)いなかったけれど、今回の「橋祭り」は小国とはいえ一国の首都で行われたもので、それを目当てに空路ラオスを目指すという人がいてもおかしくはない。
高橋克実、イッテQやらせ疑惑に川口浩探検隊を重ね…「憤り感じたことない」TVで
11/8(木) 15:19配信 デイリースポーツ
俳優の高橋克実が8日、フジテレビ系「直撃LIVE グッディ!」で、日本テレビ系バラエティ「世界の果てまでイッテQ!」にヤラセ疑惑が浮上したことに、70年代に子供達が夢中になった「川口浩探検隊シリーズ」を例に挙げ、ヤラセ疑惑を深く追及しなくてもいいのではという考えを示した。
番組では冒頭から、週刊文春が報じた「イッテQ!」のヤラセ疑惑に対し、日本テレビ側が発表した見解などを放送。文春側はイッテQ!が放送した「橋祭り」は「日本のテレビ局の働きかけで行った」とヤラセだったと報道。
一方日本テレビ側は「番組サイドで企画したりセットを設置した事実はない」としたが、その村で初開催だった「橋祭り」が以前からあったかのように誤解される部分があったことには「真摯に反省すべき点があった」としている。
これを受け、教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏は「報道番組ではない。子供達たくさん見ていて毎週楽しみにしてるんだから、あんまりこんなこと言わなくてもいいんじゃないかしら」と深く追及しなくても…という姿勢を見せ、高橋も「尾木さんも仰ったけど、子供なんかも喜んで見ている訳だから…」と同調。
そして「僕らの子供の頃、川口浩探検隊とか見てましたけど、あれに対して憤りとか感じた事ない」と、70年代に子供達に大人気だった探検シリーズを挙げ、今回のことも目くじらをたてることはないと主張。
安藤優子も「初めて足を踏み入れる!っていうのにカメラがね」と思い出したようにコメントすると、高橋も「先にカメラが足を踏み入れてるってね」と懐かしそうに振り返った。
だが大村正樹リポーターは「これが恒常化されると、視聴者はじゃあイモトさんの山登りは…となってしまう。あの番組は本気だから支持されている」と、高橋の意見を理解しつつ、持論も語っていた。
「川口浩探検隊」は1970年代から80年代にかけて放送された人気シリーズで、俳優の川口浩が大蛇や、首狩り族、恐竜魚、異常現象などを追い求めジャングルなどを探検。蛇やピラニアにかまれたり、おぼれたり罠にかかるなどするシーンが話題となった。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181108-00000077-dal-ent&pos=2
ところで、最近(勝負ではなく)パフォーミング・アートとしての「プロレス」に言及した*8。たしかに「真剣勝負」かどうかということからすれば、プロレスは「やらせ」であるわけだど、藝としてのプロレスの真骨頂は身体と身体とがぶつかり・縺れ合うことによる強度ということだろう。表現を変えれば、オーディエンスの大脳以前に先ず筋肉が感動してしまうような事態。それに比べれば、「やらせ」かどうかは末葉の問題だということになる。『世界の果てまでイッテQ!』 に対して擁護の声も少なくないというのは、やはりパフォーマンスの強度ということと関係があるのだろう。さて、プロレスはもう一つのフィクションと切り離すことができない。ギミック。レスラーのフィクショナルな〈正体〉*9。ギミックはプロレスにおけるパフォーマンスの強度にどのような役割を果たしているのだろうか。ひとつは、パフォーマンス(身体と身体のぶつかり合い・絡み合い)に物語的な文脈(因縁)を与える。もう一つとして、俺のことを信じるな的なメッセージとして機能するということもあるだろう。「橋祭り」において、フィクションはアクターではなく寧ろそのトポスに関連しているらしいのだが、それがパフォーマンスの強度にどのように影響を及ぼしているのかは改めて問われるべきだろうと思う。
*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20181108/1541695193 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20181109/1541777938
*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160219/1455818241 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160331/1459390045 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170906/1504675450 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180322/1521728135
*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070114/1168795289 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20171026/1509028010
*4:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060930/1159584533 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090723/1248363299 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110821/1313861365 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160420/1461119133
*5:それにしても、信じるなという命令に従うというのもかなりダブル・バインド的だ。
*6:そんな言葉は投じなかったけれど。
*7:ここは、ユダヤでもフリーメイソンでもコミンテルンでも中国共産党でもCIAでも電通でも安倍晋三でも何でも、お気に召すままに代入してください。
*8:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20181101/1541097299
*9:例えば、「グレート東郷」の正体を巡る森達也の考察を参照されたい。『悪役レスラーは笑う』。See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070531/1180617700 悪役レスラーは笑う―「卑劣なジャップ」グレート東郷 (岩波新書 新赤版 (982))