食われることによって生き延びる - Living, Loving, Thinking, Again

石田雅彦*1「「ナス」と「アフリカゾウ」の関係とは」https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20180901-00095342/

「ナス科」*2の植物を巡って。

だが、世界には2300種以上のナスの仲間（ナス科、Solanaceae）があり、ナス科の植物は多種多様でジャガイモやトマト、トウガラシ、タバコ、コショウなどもこの2300種のナス科に入る。ナス科の約半分がナス属（Solanum）の野菜だが、このナス属にもジャガイモやトマトが入ってくるのでややこしい。
　ジャガイモやトマト、タバコは南米（新世界）が原産だが、我々が一般的にナスと認識するようなナスは旧世界が原産で、それぞれの祖先がかなり昔に分化した。ゴンドワナ大陸 *3が分かれる前に共通祖先が現れ、その後、ナス科の植物が新大陸で多様化する（※1）*4。
　ナス科の植物は、まずトウガラシと分かれ、その後にナスとトマトの祖先が分岐し、トマトの祖先がジャガイモに分かれたと考えられている（※2）*5。
　ナスは各国各地域で独自に品種改良され、日本には180種以上あるようだ。遺伝子を調べたところ、日本のナスはインド原産で、中国から日本へ入ってきた（※3）*6。ただ、インドのナスも元をたどれば、アフリカの野生種から来たようだ（※4）*7。

さて、

Xavier Aubriot, et al., "Shedding new light on the origin and spread of the brinjal eggplant (Solanum melongena L.) and its wild relatives." American Journal of Botany, Vol.105, Issue7, 1175-1187, 2018

という論文によると、アフリカに生息するナスの野生種はアフリカゾウやインパラ*8のような大型草食動物に捕食されることによって、自らの分布を広げ、多様性を維持している。その一方で、環境破壊や密猟等によって、これらの草食動物が減れば、ナスの野生種の分布や多様性は危機に晒されることになる。

*4:Sami Doganlar, et al., "A Comparative Genetic Linkage Map of Eggplant (Solanum melongena) and Its Implications for Genome Evolution in the Solanaceae." Genetics, Vol.161, 1697-1711, 2002. Peter Wilf, et al., "Eocene lantern fruits from Gondwanan Patagonia and the early origins of Solanaceae." Science, Vol.355, Issue6320, 71-75, 2017

*5:Agnieszka Sekura, et al., "Cultivated eggplants- origin, breeding objectives and genetic resources, a review." Folia Horticulturae, Vol.19(1), 97-114, 2007

*6:Shiro Isshiki, et al., "Isozyme Variation in Eggplant (Solanum melongena L.)." Jounal of the Japanese Society for Horticultural Science, Vol.63, No.1, 115-120, 1994

*7:Terri L. Weese, et al., " Eggplant origins: Out of Africa, into the Orient." Taxon, Vol.59(1), 49-56, 2010

*8:See eg. https://en.wikipedia.org/wiki/Impala https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%A9 nako「インパラ　鹿の風貌ですが実はウシ科の狙われやすい動物」http://doubutsuiine.tank.jp/iine/?p=3907 「脅威の跳躍力「インパラ」」http://www.tomorrow-is-lived.net/wildlife/artiodactyla/impala.html