出村和彦『アウグスティヌス』

アウグスティヌス――「心」の哲学者 (岩波新書)

アウグスティヌス――「心」の哲学者 (岩波新書)

出村和彦『アウグスティヌス 「心」の哲学者』*1を読了。


はじめに 「心」の哲学者


第I章 アフリカに生まれて
第II章 遅れてきた青年
第III章 哲学と信仰と
第IV章 一致を求めて
第V章 古代の黄昏
終章 危機をくぐり抜けて


文献案内
アウグスティヌス略年譜
おわりに

「「心」の哲学者」という側面にフォーカスしつつ、アウグスティヌスの生涯を晩年に至るまで追っていくという本。ここで「心」といわれているのは、心臓と同じ表現、英語のheartに対応している(p.vii)。
さて、アウグスティヌスの知的生涯は幾つかの論争と切り離すことはできない。その多くは、カトリック教会の分裂か否かという教会政治と関わっている。マニ教との論争(p.74ff.)、「ドナティスト」との争論(p.103ff.)、「ペラギウス主義」との論争(p.128ff.)、ユリアヌスとの論争(p.150)。ユリアヌスの論点はアウグスティヌスの「原罪」論は「マニ教善悪二元論」であり、アウグスティヌスは「隠れマニ教徒」というもの。この論争についての言及が少ないのには不満を覚える。なお、「ドナティスト」問題は堀米庸三歴史学的に研究した主観主義としての「異端」問題の哲学的な起源を示している(Cf. 『正統と異端』*2)。また、アウグスティヌスは「ローマ劫掠」(pp.121-123)に象徴されるような古代の末期を生きた人でもあった。手許にあるアウグスティヌス関連の本を2冊マークしておく。アドルフ・フォン・ハルナック編『アウグスティヌス 省察箴言』(服部英次郎訳、岩波文庫、1937)。これは独逸の神学者である編者による抜粋集。「神」「愛」「倫理」などのテーマ別に編集されている。また、宮谷宣史『アウグスティヌス』(講談社学術文庫、2004)。
省察と箴言 (岩波文庫)

省察と箴言 (岩波文庫)

アウグスティヌス (講談社学術文庫)

アウグスティヌス (講談社学術文庫)