都会/田舎?

松本ミゾレ*1「「東京にいても良いことない」と自嘲する都会人は寂れてしまった地方の実態を知らない」https://news.careerconnection.jp/?p=41352


序に曰く、


都会と田舎。住むならどちらがいいのか。あなたは考えたことがあるだろうか。僕は田舎者だが、どっちかにしろと言われれば10対0で都会に住みたいと答えるだろう。だってもう、交通の便が全く違うし、娯楽の数も段違い。その上仕事をするにも田舎より選択肢が多い。

これは僕個人の考え方に過ぎないので、異論は多くて当たり前。僕と同郷の友達の中には「田舎が一番だ」とUターン就職した奴もいる。また、生まれも育ちも東京の知人は「田舎って憧れます」とか言っているし、人それぞれ意見が違うものなのだ。

ただ、やっぱり僕は田舎で暮らすというのは、場合によっては本当に耐えられないものであるということは、声を大にして言いたい。

そもそも何の基準で都会/田舎といっているのか、ちょっとわからないところもある。「田舎」というと、ムラというか、農村・漁村・山村みたいのを先ず思い浮かべるけれど、この松本さんという人が生まれ育ったのはムラではなくマチ、「宮崎の北部にある工業都市」だ。「田舎」というのは、東京や大阪や名古屋のような政令指定都市級の大都市以外の普通の地方都市のことを謂っているのか。でも、この後で、2ちゃんねる改め5ちゃんねるの「田舎者『東京に住みたい!!』東京人『東京にいても良いことないよ?』」というスレッド*2の話が出てくる。こっちの方の「田舎」イメージは農村・漁村・山村といった第一次産業的な自然への近さという感じになってくる。そういう意味での 都会/田舎問題の解決法は田舎に住んで都会で働けばいいということ。東京都だったら、八王子市、あきる野市青梅市辺りに住んで、都心に通勤する。千葉県なら、佐倉市とか成田市船橋市でも、「アンデルセン公園」*3の近くとかだったら、けっこう「田舎」な気分を満喫できる。或いは、勤め先が太っ腹で交通費をフルに出してくれるなら、越後湯沢とか那須塩原とかに住んで、新幹線で都心まで通勤する。
さて、松本さんが「生まれ育った」「宮崎の北部にある工業都市」の衰退(荒廃)が語られている。思ったのは、それは必ずしも「田舎」とは関係ないんじゃないかということだ。例えば、「今よりも地元は活気付いていた」30年前が語られるけれど、その後の衰退というのは、バブル経済の崩壊やその後の「平成不況」のせいという部分がかなりあるのでは? また、「工業都市」ということだと、グローバル化の趨勢の中、生産拠点が中国とかヴェトナムとかに移転させられてしまったのかも知れない。旧来の駅を中心とした商業街の衰退というのも決して「田舎」だけの問題ではないだろう。千葉パルコもなくなり*4三越千葉店もなくなり*5船橋西武がなくなり*6、さらには松戸伊勢丹までなくなる*7千葉県は、松本さんの基準では「田舎」ということになるのだろうか。まあ、駅前にカフェもスーパーマーケットも本屋もなく、店といえば小さなコンビニだけ、サラ金はあるのに銀行はないという街は東京近郊でもけっこうある筈。それから、商店街の守旧的な態度が再開発を妨害し、街を衰退させた云々ということが書かれているのだけど、これも「田舎」に限らず(東京近郊を含む)全国至る所で聞く話だ。「ダイエー」のような大規模店の進出には大店法という法的なハードルもあったわけで、あと土地が豊富で安い、〈モータリゼーション〉にも適合しているという理由もあって再開発は、遅くとも1980年代以降は、駅前などの伝統的な商業街を避けて、街外れの国道端などを中心に進められるようになったのでは? だから、今言った駅前が殆ど死んでいるような街でも街外れの国道端に行けば、パチンコ屋だの、ファミレスだの、スーツ屋だの、ホームセンターだので賑わっているというところも少なくない。「宮崎の北部にある工業都市」ではどうなのだろうか。