もう何十年も?

朝日新聞』の記事;


国立大付属校に「脱エリート化を」 学力でなく抽選に?

2017年8月29日19時12分



 国立大学の付属校が「エリート化」し、本来の役割を十分に果たせていないとして、文部科学省有識者会議は29日、学力テストではなく、抽選で選ぶことなどを求める報告書をまとめた。学習能力や家庭環境などが違う多様な子どもを受け入れ、付属校での研究成果を教育政策にいかしやすくすることが狙いだ。2021年度末までに結論を出すよう、各大学に求めた。

 国立大の付属校は本来、実験的・先導的な学校教育を行う▽教育実習の実施▽大学・学部の教員養成に関する研究への協力――といった役割を担う目的で設立された。だが、「一部がエリート校化し、教育課題への取り組みが不十分だ」などの指摘が出ていた。また、学校現場で教員の新規採用が減る一方、発達障害や外国人の子の支援へのニーズなどが高まり、有識者会議は国立の教員養成大・学部の改革と一体で付属校のあり方を検討してきた。

 報告書では入学の際に学力テストを課さず、研究・実験校であることについて保護者の同意を得て、抽選で選考することや、学力テストが選考に占める割合を下げることを提案。同じ国立大の付属校間で、無試験で進学できる仕組みにも見直しの検討を求めた。「多くの学校に共通する課題と対応策のあぶり出しが重要だ」とし、教員の多忙化解消などで付属校が先導役になることも求めた。

 文科省によると、国立大付属学校は現在、幼稚園49、小学校70、中学校71、高校15など計256校あり、約9万人が通っている。

有識者会議が国立大付属校に求める主な改革

・学力テストを課さず、抽選など多様な選考を実施

・同じ国立大付属校間の無試験の「内部進学」などを見直す

・教員の多忙化解消などで公立校のモデルをめざす

・30〜40年の長期間の教職生活を視野に、教員の研修機能を強化

・2021年度末までに結論をまとめ、できるものから実施
http://www.asahi.com/articles/ASK8Y5VDXK8YUTIL05L.html

今は筑駒というのか。まだ教育大駒場(教駒)と呼ばれていた1960年代に四方田犬彦が入学したときには既にエリート校だったわけで(Cf. 『ハイスクール1968』*1)、だとしたらもう数十年間、半世紀に亙って「本来の役割を十分に果たせていない」わけだ。だから、何を今更? と思う人も少なくないのでは?
「研究・実験校」で、「実験的・先導的な学校教育を行う」ということなら、具体的にどのような「実験」を行うのかを、受験生や保護者に明示するということは、インフォームド・コンセントという意味でも必要であろう。学校への配慮としては、学習指導要領からの特権的自由を法的・制度的に保障するということも必須ではあろう。そうすると、仮令「試験」を止めて「抽選」にしたとしても、自分の子どもを「国立大学の付属校」に入れようとエントリーするのは所謂〈意識高い系〉の親ということになるので、生徒の多様化にはあまり繋がらない感じがするけど、如何だろうか。
ハイスクール1968 (新潮文庫)

ハイスクール1968 (新潮文庫)

さて、相対的に学費が安い「国立大学の付属校」が「脱エリート化」した場合に起きそうなことだけど、(東京の場合だと)開成や麻布といった私立エリート校の覇権の拡大だろう。それは何を意味するかといえば、中流以下の子女が学歴エリートになるチャンスの縮小、或いは、富裕層による学歴エリートの独占の拡大ということでは? また、これは現在も問題になっている社会的・経済的格差の固定化に寄与するのでは? 
ところで、高まっている「ニーズ」の一つとして、「外国人の子の支援」が挙げられている。これに応えるために、「国立大学の付属校」がインターナショナル・スクール化するというのはあるのだろうか。