東京では7月

茺田理央*1「日本はお盆を失って、ハロウィンを手に入れた?」http://www.huffingtonpost.jp/2017/08/12/obon_n_17735154.html



楽天リサーチが2016年に行った「山の日とお盆休みに関する調査」*2で、8月のお盆に墓参りをすると答えた人は20%しかいないことに驚いている。「お墓参り」をしない理由として最も多いのは「お盆休み以外に「お墓参り」をしているから」で、27.8%。まあ納得。この調査の欠点の一つは居住地域という変数とのクロス集計を提示していないこと。調査対象は「全国」ということなのだけど、具体的な地域についてはそもそも質問しているのだろうか。特に「お墓参り」に関しては、地域という変数は大きな意味を持っていると思う。先ず、東京及びその周辺ではお盆は、原則として、新暦に従って、つまり7月のうちに行ってしまう。私は子どもの頃からお盆というのは7月だと思っていた。この方、「神奈川県出身で、母の実家は東京都」なんだけどね。東京の人にとっては、「「お盆休み以外に「お墓参り」をしているから」というのは或る意味で当たり前のことだろう。また、お盆というのは中国ではそもそも先祖というより無縁仏或いは餓鬼を供養する行事だったわけで、4月の清明節こそが先祖の墓参りをする日ということになる。だから、中国文化の影響が強い沖縄ではお盆に墓参りする意味は弱くなる。
実はそれよりも驚いたのは、お盆に「帰省」する人は「墓参り」する人よりも少ないということ(15.7%)。想像したのは、既に祖父母の代に東京などの大都市圏に移住・定着したという人だと、「帰省」という言葉は無意味になるよねということだ。
さて、上述したように、お盆はそもそもは身内とか先祖以外の霊を供養する行事であり、家庭行事としてのお盆が先祖とか身内に特化してしまったとしても、上掲の記事でも言及されている京都の「大文字」*3とか地蔵盆とかお施餓鬼などの地域行事としてのお盆には、身内以外の霊の供養という意味が生き続けている。8月が供養(鎮魂)の月としてイメージされるのは寧ろ戦後的な現象なのかも知れない。このような基礎の上に、ヒロシマナガサキ原爆忌や815が重ねられて。
さて、「ハロウィン」が「お盆」に取って代わるということはないだろう。楽天リサーチの「ハロウィーンに関する調査」*4によると、8割以上の人が「ハロウィンがどんなイベントが知っている」とはいっても、それは表面的なイメージについての認知であって、「ハロウィーン」の歴史・来歴、或いは〈西洋お盆〉*5ともいえる死者が回帰する日という意味についての認知は低いといえるのでは? まあハロウィンが盛り上がるのはいいことだけど。