承前*1
『シネマトゥデイ』の記事;
河瀬直美監督『光』カンヌでエキュメニカル審査員賞!パルムドールに弾み【第70回カンヌ国際映画祭】2017年5月27日 23時44分
現地時間27日、第70回カンヌ国際映画祭でエキュメニカル賞の授賞式が行われ、コンペティション部門に出品されている河瀬直美監督作『光』*2がエキュメニカル審査員賞を受賞した。日本人としては、2000年に受賞した青山真治監督(『EUREKA ユリイカ』)以来、2人目の受賞者となる。
授賞式には河瀬監督と主演の永瀬正敏が登壇。「メルシーボークー」と切り出した河瀬監督は「映画というものは何なんだろうと考えて作りました。映画がもたらすものはたくさんありますが、人を繋ぐものだと思っています。人は人種も国境も越えていくものだと思います。映画館の暗闇の中で、映画という光と出会うとき、人々は一つになれるのだと思います。カンヌでも一体感を持てたことがうれしかったです。この混沌とした時代に、70年という記念の年に栄えある賞をいただけて大変うれしく思います。ありがとうございます」と喜びを語った。
エキュメニカル賞は、プロテスタントとカトリック教会の国際映画組織「SIGNIS and INTERFILM」の6人の審査員によってコンペ部門出品作の中から選ばれる賞で、人間の内面を豊かに描いた作品に与えられる。近年の日本作品では、福山雅治が主演した是枝裕和監督作『そして父になる』が次点の「エキュメニカル賞特別表彰」を受け、翌日のコンペ部門の授賞式でも審査員賞を受賞していた。パルムドールが発表される明日に向けて、本作も大きく弾みをつけたといえる。今年は特別表彰に選ばれた作品はなかった。
『光』は、視力を失いゆくカメラマン(永瀬)と、視覚障害者向けに映画の音声ガイドを制作する女性(水崎綾女)が心を通わせていくさまを丹念につづったラブストーリー。23日に行われた公式上映では河瀬監督らに約10分のスタンディングオベーションが贈られるなど、カンヌの人々の心をつかんでいた。(取材:市川遥、編集:入倉功一)
映画『光』は公開中
第70回カンヌ国際映画祭授賞式ライブは日本時間28日翌1:15〜ムービープラスにて放送
https://www.cinematoday.jp/news/N0091848
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岡田秀則「他人と一緒に見る夢」(『未来』483)という文章を思い出した*3。曰く、
もともと映画鑑賞とは、隣席に家族がいようが恋人がいようが、自分とスクリーンとの一対一の体験でしかない。そのことは、年に数百の映画をスクリーンで観た経験のある方になら難なく理解されることだろう。その孤独感を抜きにして、映画を自分の生活に取り入れることはできない。にもかかわらず、いま考えずにはいられないのは、映画館の暗闇の中で、互いに面識のない人々が同じスクリーンを見つめているという単純な事実だ。(pp.18-19)
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言うまでもなく、現代の子どもたちは、何気ない日常を送っているだけですでに圧倒的な量の映像体験に晒されている。テレビでもインターネットでも構わない、それら映像の大半は、ひとりひとりが分断された場で享受されている。映画を「コンテンツ」なる言葉に格下げし、その享受の形式を問わない思考は、こうした分断の思想とパラレルである。だから、DVDで鑑賞することを誰もが「映画を観る」と言ってはばからない現在、それでも映画館の闇に意義があるとすれば、それは生活環境もまったく異なる、互いに知らない人たちがスクリーンに向かっているからだろう。確かに映画館に行けば、他の来場者など目に見えない存在であってほしい。なのに一方で、自分以外誰もいない映画館をひどく恐れていることにも気づく。映画は誰だか知らない他人と共有されなければならないのだ。学生時代、場内が煙草くさい盛り場の小屋でフィルムが傷だらけの任侠映画を観ていて、映画内と似た世界に住んでいるであろう方から愉快な俳優論を拝聴したことがあるが、そもそも映画館とはそういう無政府的な空間である。だからいま、大画面で美しい画質と迫力ある音声が享受できるから、という発想でしかスクリーン上映の価値を説明してこなかった自らの不明を恥じている。(p.19)
「河瀬直美「光」カンヌ映画祭でエキュメニカル審査員賞を獲得」http://natalie.mu/eiga/news/234424